ロック、ミュージック、経血ゼリーのようです
- 2 :読者速。:2010/09/05(日) 23:43:28 ID:3azLLtHAO
-
やっぱり、給食のあとの歴史は眠くなる。僕は眠るまい、と必死で自分と戦っていた。
(*゚∀゚)「そして暗黒時代が終わり、世界はまた平和になったんだわさ」
乳首をつねってみようかと思ったとき、終わりのベルが鳴った。
何故だか眠気は、ベルと一緒に消えていってしまったみたいだ。
(*゚∀゚)「じゃあ今日の授業は終わり! 帰りの会も省略するぞー」
(*゚∀゚)「気をつけて帰れよー」
つー先生は凄くいい先生だけど、凄く適当だ。
僕はグッピーの餌当番を決めたかったけれど、明日にしようと思った。
( ・∀・)「おーい、ドクオ」
教科書を鞄に詰めていると、クラス一のイケメン、モララー君が話しかけてきた。
- 3 :読者速。:2010/09/05(日) 23:46:00 ID:3azLLtHAO
-
('A`)「何だい、モララー君?」
( ・∀・)「聞いたかい、遂にショボンの野郎も頂いたそうだぜ」
( ・∀・)「経血ゼリー」
('A`)「へ、へぇ……」
僕は平静を装っていたけれど、本当は凄くどきどきしていた。
経血ゼリーを貰っていないのは、あとは僕とショボン君だけだったからだ。
( ・∀・)「これでクラスの皆、女の子に経血ゼリー貰ったみたいだな」
( ・∀・)「あれ?」
(;'A`)「う……」
( ・∀・)「そういや、ドクオはまだだったかな?」
- 4 :読者速。:2010/09/05(日) 23:49:03 ID:3azLLtHAO
-
('A`)「……僕だって」
('A`)「僕だってすぐに、経血ゼリーで鞄がいっぱいになるもん」
( ・∀・)「じゃあ、今誰かに貰ってみなよ」
('A`)「いいよ」
ちょっと見栄を張っちゃった僕はいいよ、なんて返事をしてしまった。
胸は不安でいっぱいだ。だけど、いつかは通る道なんだ。
勇気を出して、水槽の前でお喋りしている女の子達に近づく。
('A`)「ね、ねえ……」
緊張して声が上擦る。
誰かに告白するのはこんな気分なのかも知れない。
ミセ*゚ー゚)リ「なあに?」
川 ゚ -゚)「?」
まずはジョークで和ませて、それから経血ゼリーを貰う。
家で何回も練習してきたんだ、きっと上手くいくはずだ。
- 5 :読者速。:2010/09/05(日) 23:52:21 ID:3azLLtHAO
-
('∀`)「僕のエクストが、エクストプラズマン!」
ミセ*゚ー゚)リ「……」
川 ゚ -゚)「……は?」
( ・∀・)「まあまあ、みんな落ち着いて」
眺めていたモララー君が笑いながらこっちに寄ってきた。
僕はどうしたらいいか分からなくて、水槽のグッピーを見つめる。
グッピーはちょうど糞をひねり出していて、僕はあまり良い気分じゃなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「あ、モララー君!」
( ・∀・)「おっと一番落ち着かなきゃいけないのは、僕のエクストプラズマンだな」
ミセ*゚ー゚)リ「きゃー! モララー君素敵!」
ミセ*゚ー゚)リ「私の経血ゼリーあげちゃう!」
川*゚ -゚)「私も私も!」
- 6 :読者速。:2010/09/05(日) 23:56:10 ID:3azLLtHAO
-
女の子はまるで見えないかのように、僕を押しのけてモララー君を囲みだした。
僕は、経血ゼリーの一つも貰えない自分が恥ずかしくなる。
('A`)「モ、モララー君のばかー!」
(; ・∀・)「あ、ドクオ!」
頭が真っ白になって、教室を飛び出した。
('A`)「みんなのばかー!」
校門を抜けたところで息が切れて、とぼとぼと歩きだす。
- 7 :読者速。:2010/09/05(日) 23:58:38 ID:3azLLtHAO
-
('A`)「ずっと女の子から経血ゼリーも貰えない人生なのかな?」
('A`)「はぁ……」
世界は平和だなんて先生は言うけれど、僕にはちっともそうは思えなかった。
イケメンのモララー君がジョークを言うと喜んで、僕が言うとみんな不機嫌になる。
そんなの不公平だ。思わずため息がこぼれる。
('A`)「はぁ……」
(*'A`)「経血ゼリーでいっぱいのプールで泳ぎたいなぁ」
そんなことを考えていた時だった。
道路の真ん中で何かが光っているのが僕の目に映った。
('A`)「あれは……?」
- 8 :読者速。:2010/09/06(月) 00:03:10 ID:nG2T7v7AO
-
* * * * * *
2045年、東京ーー
激しいドラムの音が直に聴覚を刺激してゆく。
やがてヴォーカルの特徴的な低い声が聴こえ始めた。Space boy you're sleepy……
(#゚;;-゚)「……」
50年も前の音楽だ。今では、懐かしむジジイぐらいしか聴く者はいない。
(;‘_L’)「ハァハァッ……許してくれ……」
(#゚;;-゚)「今サビなんだよね。黙っててくれないかな」
- 9 :読者速。:2010/09/06(月) 00:05:15 ID:nG2T7v7AO
-
しかし何と言われようが、私はこの時代のロックが好きなのだ。
(;‘_L’)「分かった! 黙る! 黙るから……」
口に含んだ電音ガムの、擬似的に錯覚させる味が苦くなる。曲の終わりに近づいたようだ。
(#゚;;-゚)「もういいよ」
左手に構えた拳銃で、奴の頭を吹っ飛ばした。
派手に飛び散る返り血に、私は目を閉じる。ライブラリは次の曲を再生していた。
(#゚;;-゚)「しぃちゃん、私やったよ」
しぃは、今はもういない。
経血ゼリーを無理矢理奪われた彼女も、きっとこれで報われるだろう。
- 10 :読者速。:2010/09/06(月) 00:07:08 ID:nG2T7v7AO
-
アメリカの経済破綻によりドルは信用を無くし、それは世界恐慌へと変わった。
スラムと普通の街の境界は消え、モラルは著しく低下した。
そんな中、経血ゼリーこそ人の全てであるとどこかのカルトが言い出した。
お金、仕事、夢。
今までそこにあって当たり前のものが、全て崩れ去ったのだ。
自暴自棄になった人々の中で、その悪しき俗習は爆発的に流行した。
それは文化に成りかねない勢いだった。
勿論政府は経血ゼリーを禁止するも、それが更に酷い結果に繋がる。
闇経血ゼリーが広まったのだ。
- 11 :読者速。:2010/09/06(月) 00:11:25 ID:nG2T7v7AO
-
(#゚;;-゚)「……」
(#゚;;-゚)「……煙草、買わなくちゃ」
飛んでいた意識を現実に戻す。目の前の男は、とうに息絶えていた。
私はレインコートを羽織り部屋を後にする。薄暗い街だ、これで返り血も目立たない。
天に刺さるように立ち尽くす高層ビルのせいで、日中でも常にどんよりと暗い。
<ヽ`∀´>「いらっしゃい、いらっしゃい!」
その機能していない無人のビルの前では、無許可の露天が並んで様々な物を売っている。
( ´_ゝ`)「高いな、半値で売れ、半値」
揺らめく露天商のネオンと溢れる人。
右へ左への流れに私も身を任せて歩きだす。
- 12 :読者速。:2010/09/06(月) 00:13:59 ID:nG2T7v7AO
-
(#゚;;-゚)(煙草を買ったらペニサスのとこに寄ろう)
濁流のような人の群れを抜けて、顔馴染みの露天の前で立ち止まる。
店主は読んでいた書物を閉じ、私に歪んだ笑顔を向ける。
とても胡散臭い笑顔だと私は毎回思う。
(#゚;;-゚)「いつもの煙草。5本ね」
( ^^ω)「どうもでぃさん、等級はどうします?」
(#゚;;-゚)「私がA級買うと思ってるの?」
一番高い等級は馬鹿高い税金もちゃんと納める、政府純正の煙草だ。
滑らかな喉越しらしいが、私は吸ったことがない。
( ^^ω)「はいはい、いつものですね」
- 13 :読者速。:2010/09/06(月) 00:17:10 ID:nG2T7v7AO
-
吸い殻の根本に残った葉を集めて巻いた、この店オリジナルの屑煙草。
超ロースト仕様だと思えば、吸えないこともない。
私はその場で煙草を一本くわえ、店主と立ち話をした。
(#゚;;-゚)「しかし、ごちゃごちゃと色々売ってるよね」
( ^^ω)「お客様のニーズに応えるのも仕事のうちですから」
人工肉製品からよく分からない怪しげなものまで、所狭しと置かれている。
貼り紙に商品名だけ書かれ現物のないものは、恐らくドラッグの類だろう。
(#゚;;-゚)「電音ライブラリの新しいのはある?」
( ^^ω)「いやぁ、ウチじゃ扱ってないですね」
- 14 :読者速。:2010/09/06(月) 00:20:36 ID:nG2T7v7AO
-
(#゚;;-゚)「そうなんだ」
( ^^ω)「技術はあっても、作る人なんていませんよ」
埋め込んだライブラリが不調を来たし、終始音楽が私の脳内で鳴り続けている。
今は丁度、昔好きだったポップソングが流れていた。
(#゚;;-゚)「そっか、ありがとう」
バッテリーが切れるのは私がババアになる頃だろう。
その場に吸いきった煙草を捨てて歩き始める。
吸い殻を拾う店主が目に入ったが、私は何も言わなかった。
(#゚;;-゚)(吸い殻の吸い殻の煙草を巻いて、最後には何を吸うんだろう?)
雑踏の中、私はそんなどうでもいいことを考えていた。
- 15 :読者速。:2010/09/06(月) 00:25:26 ID:nG2T7v7AO
-
露天の繁華街を抜けたそばのマンションに立ち入る。
マンションと言っても管理者は居らず、エントランスは無人だ。
(#゚;;-゚)(ペニサスは201号室だったかな)
鍵の掛かる部屋は殆ど空き部屋で、掛からない部屋は誰かが勝手に使っている。
ペニサスはそこの正式な入居者だが、勝手にそこでバーを開いている。
まともな入居者は稀にいても、まともな人間はあまりいない。
玄関の扉を開けたすぐそこに、いつものようにシャキンが座っていた。
(#゚;;-゚)「こんばんわ」
(`・ω・´)「あ、ども!」
(`・ω・´)「し、でぃさんいらっしゃいませ!」
シャキンはこの店の従業員だ。
ペニサスが言うには用心棒兼、雑用らしいが、私は恋人なんじゃないかと睨んでいる。
- 16 :読者速。:2010/09/06(月) 00:29:24 ID:nG2T7v7AO
-
(`・ω・´)「どうぞ、奥へ」
居間を改装した5席程の簡素なバーには、今時珍しい木材が使われている。
それは何故か私をホッとさせる。よく来てしまうのも、そのせいかも知れない。
('、`*川「あら、いらっしゃい〜」
ペニサスはカウンターの内側で、小説を読んでいた。
紙も貴重な現代に小説は贅沢品だ。
(#゚;;-゚)「一番安いお酒」
(`・ω・´)「そんなの飲んでいたら、体に悪いですよ」
(#゚;;-゚)「いいの」
('、`*川「はい、バーボン。混ぜ物無しよ」
(#゚;;-゚)「え?」
粗悪なアルコールを混ぜていないお酒は値段が倍は高い。私もしばらく飲んでいない。
- 17 :読者速。:2010/09/06(月) 00:34:04 ID:nG2T7v7AO
-
('、`*川「これはサービス。あとでシャキン君の給料から引いておくわ」
(;`・ω・´)「そんな勝手な!」
('、`*川「あら、安酒は体に悪いんでしょ?」
(;`・ω・´)「それとこれとは話しが……」
(#゚;;-゚)「……」
似合わないウィンクを決めるペニサスに、横で慌てふためくシャキン。
私はちょっと笑って礼を言った。
(#゚;;ー゚)「ありがとう」
('、`*川「あれ、顔に血が付いてるわ」
('、`*川「私が拭いてあげる〜」
どんな接客業にも暗黙のルールがある。
- 18 :読者速。:2010/09/06(月) 00:37:09 ID:nG2T7v7AO
-
客が話したくないと思うことは、訊かないように気をつけなければならない。
('、`*川「また怪我したの?」
('、`*川「でぃさんってば、おっちょこちょいね」
ペニサスはその辺がいまいち分かってないのだ。
緊張した顔のシャキンをよそに、能天気な調子で色々と訊いてくる。
('、`*川「どこを擦りむいたんだろね?」
(`・ω・´)「そ、それよりソイフードが入ったんです。如何ですか?」
そんな対称的な二人が可笑しかった。
(#゚;;-゚)「じゃあ一つ食べようかな」
('、`*川「あ! 誰か別の人の血だったりして!」
- 19 :読者速。:2010/09/06(月) 00:44:09 ID:nG2T7v7AO
-
慌ててシャキンがペニサスの声に被せるように言う。
(;`・ω・´)「分かりました! 今作りますね!」
ペニサスはペニサスでどこ吹く風だった。
この二人だったら何のお店でも成功するかもしれないな、と私は思った。
('、`*川「なんちゃって〜」
それから、他愛のない雑談をした。
というよりは、二人の会話に私が時たま意見を言う感じだった。
そういうのが私は好きだった。
('、`*川「でね、シャキン君荷物忘れててね、食料全部腐ってんの」
(#゚;;-゚)「うんうん」
(`・ω・´)「だから、それはペニサスさんが取ってくる予定だったじゃないですか」
- 20 :読者速。:2010/09/06(月) 00:50:49 ID:nG2T7v7AO
-
一枚のアルバムが終わる頃、ペニサスが言った。
('、`*川「そうそう、経血ゼリーの売人が分かったわよ」
接客業は顔が広い。私はペニサスに捜してもらうように頼んでいた。
(#゚;;-゚)「ほんとう、なんて奴?」
('、`*川「私が写真を撮ってきたんだから、えっへん!」
そう言って見せられた写真は、ややピントのずれたものだったが顔は分かった。
それは、私の知る人物だった。
グラスに残った酒を一気に飲みきる。口に独特の酸味が残った。
(#゚;;-゚)「ありがとう、そろそろ行く」
- 21 :読者速。:2010/09/06(月) 00:53:06 ID:nG2T7v7AO
-
('、`*川「また必ず、来なさいよ」
(#゚;;-゚)「うん」
或いはペニサスは私が何をしているのか知ってて、訊くのかもしれない。
ペニサスの言葉は、何となくそんなニュアンスだった。
お金を席に置いて立ち上がると、玄関まで見送りにシャキンがついてきた。
(`・ω・´)「でぃさん、あんまり無茶なことはしないで下さいね」
(#゚;;-゚)「分かってる」
これから無茶をするのだ。
私は話しを変えたくなって、あの推測を聞いてみた。
(#゚;;-゚)「それより、ペニサスとは上手くいってるの?」
シャキンの顔が僅かに緩む。
- 22 :読者速。:2010/09/06(月) 00:58:43 ID:nG2T7v7AO
-
(`・ω・´)「昨日、初めて僕のために料理を作ってくれて…………」
どうやら勘は当たっていたらしい。私は心の中でガッツポーズを決めた。
(`・ω・´)「って、あれ? 知ってたんですか?」
(#゚;;-゚)「ふふ、今知ったの」
(;`・ω・´)「あ、ハメましたね! 内緒の約束なのに!」
(#゚;;-゚)「ずっと仲良くしなきゃだめだよ」
ドアを閉める前に私はそう言った。いつまでも、二人の平和が壊れないことを思って。
- 23 :読者速。:2010/09/06(月) 01:06:57 ID:nG2T7v7AO
-
(#゚;;-゚)(さて、と)
顔を二回ほど叩いて酔いを覚ます。
(#゚;;-゚)(ほろ酔いぐらいなら、大丈夫か……)
その足で私は人と物が溢れる露天街に戻った。
街は夕暮れを迎え、音楽越しでも騒がしく聞こえるくらいに活気づいていた。
(#゚;;-゚)「……」
思えば、納得がいく。
経血ゼリーは高価で取引される。
高い書物だって読めるし、潤沢な資金で売る商品も揃う。
お客様のニーズは広いものだ。
(#゚;;-゚)「こんばんわ」
私の声に顔を上げた彼は、相変わらず笑顔だった。
- 24 :読者速。:2010/09/06(月) 01:11:16 ID:nG2T7v7AO
-
それは、笑顔と呼んでいいのか分からない、笑わない笑顔だった。
( ^^ω)「これはこれは」
( ^^ω)「一日に二度もいらっしゃるなんて珍しいですね」
( ^^ω)「また煙草ですか?」
私は屋台の貼り紙を眺めて言う。
(#゚;;-゚)「そこに書いてある、丹ってのを一つ頂戴」
一瞬店主の表情が曇るのを私は見逃さなかった。
やっぱりそうなのか。
( ^^ω)「ああ、それは倉庫にありまして……」
(#゚;;-゚)「待ってるから取ってきてよ」
( ^^ω)「あ、えと、在庫切れだったかも知れません」
(#゚;;-゚)「どう? これであるかどうか思い出した?」
私は人目も憚らずに、屋台を挟んで店主の頭に拳銃を突きつけた。
(; ^^ω)「ど、どうしたんですか! でぃさん落ち着いて!」
- 25 :読者速。:2010/09/06(月) 01:15:03 ID:nG2T7v7AO
-
なだめる店主を無視して、私は話し始める。
(#゚;;-゚)「一人の可哀想な少女がいたの」
(#゚;;-゚)「ある日買い物に出掛けていた彼女は、突然背後から目隠しをされて」
店主の顔は見る見る青ざめていく。私は続ける。
(#゚;;-゚)「どこかの廃ビルに連れ込まれた」
(#゚;;-゚)「そのあとは何があったか分かるでしょ?」
闇経血ゼリーの出所は、無理矢理奪われた経血ゼリーだ。
悲劇の少女の経血ゼリーはそうやって売られてゆく。
(; ^^ω)「クソッ!」
突然店主が屋台を押し倒した。そして転けそうになりながら逃げ出す。
ごちゃごちゃとなだれる商品を避け、私も追いかける。
- 26 :読者速。:2010/09/06(月) 01:18:17 ID:nG2T7v7AO
-
人混みに向かわず、そのまま後ろの廃ビルに逃げ込んでくれたのは幸いだ。
(#゚;;-゚)「……」
オートドアは開いたまま、止まっている。
注意深く入りこむと、ビルの内部は外見から想像出来ないほど荒れていた。
崩れかけの鉄柱の裏から声だけが聞こえる。
「ははっ! でぃさんよお、てめえの経血ゼリーも頂いてやるよお!」
頭に響くロックが邪魔をして、正確な位置が掴めない。
Tragic youth was……
(#゚;;-゚)(くそっ! 集中するんだ!)
「いや、そんな傷だらけの女のは、誰も欲しがらないかもなぁあ」
Now my sight is……
それでも、声のする方向方向に一歩ずつ進む。
- 27 :読者速。:2010/09/06(月) 01:25:10 ID:nG2T7v7AO
-
音楽と緊張で心臓が高鳴り、上下がひっくり返りそうな気分に襲われる。
私は逃げたくなった。
「あっはっははは」
Da da da da da……
(#゚;;-゚)(落ち着くんだ!)
無理矢理経血ゼリーを奪われた少女のことを考える。
私は、私は逃げるわけにはいかない。
(#゚;;-゚)(あ……)
一瞬、音楽が止まった。曲が終わったのだ。
その静寂を破るかのように微かに、けれど確かに物音が聞こえた。
(#゚;;-゚)(すぐ後ろだ!)
- 28 :読者速。:2010/09/06(月) 01:33:49 ID:nG2T7v7AO
-
勢いよく振り返り、構えた拳銃を発砲する。
(; ^^ω)「ああっ……ぐ、」
確かに彼は後ろにいた。私の放った弾丸は、見事に彼の首を貫いていた。
(#゚;;-゚)(やった……)
だけど、彼は余りにも近くにいた。胸がじわじわと痛み出して、それが分かった。
見ると、ナイフが私の胸に突き刺さっていた。
(#゚;;-゚)(……)
(#゚;;-゚)(ペニサスさん、ごめんなさい……)
(#゚;;-゚)(もうお店、行けないや……)
彼は床に伏せたままだ。恐らく死んだ。
私はよろめきながら、少し離れた位置に座り込む。
(#゚;;-゚)「うっ……」
体が火照り、頭が燃えるように熱い。外の風を浴びたいが、もう一歩も歩けそうにない。
- 29 :読者速。:2010/09/06(月) 01:39:45 ID:nG2T7v7AO
-
割れるような音量でロックが流れている。
(#゚;;-゚)(この曲がラストナンバー、か……)
好きな曲を聴きながら死ねるのも幸せなのかも、と私は思った。
(#゚;;-゚)(ほんとは、もう少し生きていたかったけど)
痛みが段々と薄らいでいく。神経が麻痺しているだけかもしれない。
(#゚;;-゚)(好きな男に経血ゼリーすらあげれなかったな……)
(#゚;;-゚)(結局、そんな男は現れなかったけど)
(#゚;;-゚)「ふふっ」
次第に意識が閉じていくのを感じる。考えも上手くまとまらない。
(#゚;;-゚)「ばいばい、しぃちゃ……」
(#゚;;-゚)「」
頭の中では、私の知らない平和だった時代のロックがいつまでも流れていた。
- 30 :読者速。:2010/09/06(月) 01:46:29 ID:nG2T7v7AO
-
* * * * * *
砂粒大の何かが夕日を受けてキラキラと輝いている。
道路は完璧に舗装されているから、僕はすぐに分かった。
('A`)「何だろう?」
近づいて手に取ってみると、それは音楽の電子ライブラリのようだった。
雨や風にさらされて、所々傷付いている。
('A`)「埋め込むタイプのだ、古いなぁ」
('A`)「風に飛ばされてきたのかな?」
(*'A`)「もしかしたら、お宝かも!」
家に帰ったらパソコンに繋いでみよう。まだ聴けるかもしれない。
なんだか僕は楽しくなって、経血ゼリーが貰えない事もどうでもよくなった。
- 31 :読者速。:2010/09/06(月) 01:51:54 ID:nG2T7v7AO
-
('A`)「多分少し間違えていたんだ」
冷静になって、初めて僕は気付いた。
('A`)「たくさんあっても意味無いじゃないか」
ただ一つだけでも、好きな人の経血ゼリーが貰えればそれで充分なんだ。
そしてきっと、それが出来る世界は平和なんだ。
('A`)「……よし!」
(*'A`)「いつか、経血ゼリーの貰える男になるぞ!」
僕は家に向かって走り出した。
電子ライブラリをなくさないように、ギュッと握りしめて。
終わり
- 32 : ◆nBapHd/hQc:2010/09/06(月) 01:57:21 ID:nG2T7v7AO
-
夜遅くまで投下に時間掛かってすみませんでした。
そして、三国志お疲れ様アンドありがとうございました!
トップへ