( ^ω^)ブーンたちが戦場を駆け巡るようです
- 2 名前:プロローグ ◆SugarIiluA :2007/08/27(月) 21:03:50.87 ID:goRoz8Jj0
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戦争を知らない”子供達”へ
( ^ω^)ブーンたちが戦場を駆け巡るようです
プロローグ
- 15 名前:プロローグ ◆SugarIiluA :2007/08/27(月) 21:05:45.79 ID:goRoz8Jj0
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「こわいよおお、おかあさああん、こわいよおお」
「うええええん、やだあああああ」
何度も、何度も船が大きく揺れる。その度に子供たちが泣き叫ぶ。
波が強いからではない。敵国、ラウンジの戦闘機から攻撃を受けている為だ。
また爆発音が聞こえ、船が大きく揺れた。
子供たちの泣き叫ぶ声が大きくなる。
船室の中は子供たちが、ぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。
その大半が泣き喚いており、残りは頭を抱えてガタガタと震えている。
僕は仲のよい友達と船室の端っこで震え、自分の運命を呪っていた。
どうして命を狙われないといけないんだ。
僕が何かしたとでも言うのだろうか?ふざけるな、僕は何もしたつもりはない。
まだ死にたくない、死にたくないのにっ……。
僕は恐怖と憎悪の入り混じった感情と一緒に、下唇をギュッと噛んだ。
血の味が口の中にじわじわと広がっていく。それでも気にしなかった。
- 24 名前:プロローグ ◆SugarIiluA :2007/08/27(月) 21:07:35.81 ID:goRoz8Jj0
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一際大きな爆発音が響き、船室が今までにないほど揺れた。それと同時に視界が大きく傾く。
誰かが咄嗟に船室の扉を開けた。そこから子供たちが我先にと、揉み合いながら逃げている。
僕は友達と一緒に、人の波を掻き分けて外へ出た。
その刹那、船が大きく傾き、僕たち二人を含め、外へ逃げた子供たちはみんな海へと放り出された。
船が沈んでいくのを、僕らは呆然と見つめていた。
鮫島は見える所にあるが、とても泳げるような距離ではなかった。
それに万が一戻れたとしても、ラウンジ兵に見つかれば終わりだ。
――死、ぬ?
頭の中にその単語が浮かんだ。その瞬間、寒気にも似た怖気が全身を駆け巡る。
喉元に熱いものがこみ上げてくる。
酸っぱいそれを嚥下し、がんがんと痛む頭を押さえた。
死ぬなんてまだまだ遠い事だと思っていた。
ありえるはずがないと思っていた。
穏やかで暖かく、危険とかけ離れた日常がずっと続くと思っていた。
だからこそ、今目の前に突きつけられている現実が受け入れられなかった。
- 26 名前:プロローグ ◆SugarIiluA :2007/08/27(月) 21:08:56.29 ID:goRoz8Jj0
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誰もがその場で漂っているしかできなかった。
そんな時、キーンという耳鳴りにも似た高い音が聞こえた。
忘れもしない、戦闘機の音だ。嫌な予感がする。
その瞬間、僕たちへ機関銃の嵐が容赦なく降り注いだ。
一人、また一人と、頭から血を流して海に消えていく。
肩や腕に当たった者も大量の血を流し、泣き喚いている。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
「うあっ……うわあああ、死にたく、死にたくないお!」
僕は口をついて出てくる叫び声を抑える事が出来なかった。
生理的な涙が頬を伝い、大きく開けられた口の中に流れ込む。
それに咽ながらも、僕は叫び続けた。
- 34 名前:プロローグ ◆SugarIiluA :2007/08/27(月) 21:10:28.35 ID:goRoz8Jj0
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機関銃の嵐が止む頃には、コバルトブルーの美しかった海が、子供たちの血で真っ赤に染まっていた。
僕はズキズキと痛む喉を押さえながら、自分が生きている奇跡に驚いた。
同時に、自分以外、誰一人とて海面から顔を出していないのに絶望した。
家族のように仲良くした島の仲間も、友達も、もう誰もいない。
両親とは違う船だったが、この様子だと生きているかどうかすら定かではない。
「は、ははは……天罰、かお?」
自嘲的にそう呟いた声は掠れていた。それにまた自嘲する。
――何もかも疲れた。考えるのも、怖がるのも、死を恐れる事も。
僕は赤い海に身を任せた。
しばらくの間はぷかぷかと浮いていたが、やがて来た大きな波で、海の中に沈んだ。
意識がだんだんと黒く塗り潰されていく。
僕が最後に見た光景は、紅色と蒼色の混ざった海だった。
- 40 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/27(月) 21:13:30.80 ID:FxaSeZxk0
- プロローグは以上です。
本編投下開始します