( ^ω^)ブーンたちが戦場を駆け巡るようです
145 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 22:35:52.34 ID:780KVCjI0
7月9日、鮫島

〔´_y`〕「…………という訳で、我が軍は突破目前まで迫られております」

ガシューからの報告が、兄者に入った。
VIPは劣勢らしい。
無理もない、物量で圧倒的に負けているのだから。

( ´_ゝ`)「ふむ、あと持って……一週間無いぐらいか」

〔´_y`〕「やはり、その程度かと……」

( ´_ゝ`)「把握した、ラウンジの戦闘機も来るだろう。
       被害を受けない場所で情報収集に務めるように」

〔´_y`〕「了解しました。
      ……すいません、一つ気になった事をお尋ねしても宜しいでしょうか?」

珍しく、了解しか言わないガシューが自分の意見を言ってきた。
何か不思議な点でもあったのだろうか。

( ´_ゝ`)「なんだ、構わんぞ」

〔´_y`〕「……ラウンジに裏切るからといって、戦闘自体は手を抜きませんよね?」

( ´_ゝ`)「此方が勝たない程度に手は抜く、その為のスパイだ」

〔´_y`〕「そうですか……フィル少佐はとても張り切っています。
      裏切るということを、考えてないかのようです」

148 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 22:38:26.48 ID:780KVCjI0
自分はどういう考えを持ったらいいのか、という事に悩んでいるようだ。
フィルと兄者の、態度の違いかららしい。

( ´_ゝ`)「お前も考えるな、考えるのはスパイの俺だけでいいのさ。
       ……………………疑問はそれだけか?」

〔´_y`〕「…………はい、ではまた情報収集に戻ります」

ガシューが退室する、やはり彼は一礼を忘れなかった。


( ´_ゝ`)「ふぅ……司令官も楽じゃないな」

そういって、彼は机の上にある書類を纏め始める。
ここ数日の戦況を、紙上に残しているのだ。

( ´_ゝ`)(そういえば……一昨日避難船が爆破されたらしいな)

150 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 22:40:50.61 ID:780KVCjI0
彼にとっては、平和が全てであった。
平和を愛する親友がいて、それに影響され自分も平和を愛した。そして弟も同じだった。
それを乱す奴は許せないのだろう、しかし現状がこれだ。

自分が、恒久の平和を手に入れる為に所属し、戦っている国は、避難船を爆破する。
被害を減らす為に、スパイとして潜り込んだ国では、戦争を目論んでいる。

彼は、何を信じればいいか分からなくなっていた。

(#´_ゝ`)「くそっっ!!」

八つ当たりに机を叩いてみるも、現状は変わらない。
もう、戦争は始まっているのだ。

早く戦争を終わらせよう、そう決意した兄者だった。

152 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 22:43:25.61 ID:780KVCjI0
7月11日

(;´_ゝ`)「しまった……悩みすぎた……」

兄者は自室で頭を抑えていた。
二日前に悩んでいたことが、未だに尾を引いているからだ。

(;´_ゝ`)「ガシューの報告は何か紙に書いてもらっててくれ、俺は寝るぞ」

近くの兵にそう伝え、仮眠をとってしまった。

ここ数日の間に、港が破壊された。
艦隊から戦闘機が飛んできて、飛行場と港は壊滅。
折角の試作機も、これでは宝の持ち腐れ。

などなど、平和が遠くなり、兄者はストレスを溜め込んでいった。
まだ陸戦には遠い、その余裕もあってか、休養をとったのだろう。





( ´_ゝ`)「……治ったな」

153 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 22:45:29.35 ID:780KVCjI0
目覚めると、もう夕方だった。
ガシューからの報告書は、机にきちんと整理されて置いてある。

夕食を済ませ、風呂に入った兄者は報告書に目を通したあと、部屋で少しまた考える。

しかし、考え出すと昼の二の舞になるので、気分転換に散歩をすることにした。

( ´_ゝ`)「そういえば……ここの地形を把握しきってないしなぁ……」

そう呟きながら、基地を後にする。




鮫島は、自然が美しい。
だから夜空も、必然のように綺麗だ。

( ´_ゝ`)「……空を見てると、自分がいかに小さい存在かが、実感できるな」

在り来たりな台詞を吐きながら、夜空を眺める。

155 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 22:47:00.93 ID:780KVCjI0

空を眺めながら歩いていた時、彼は不意に気配を感じる。
前方から、二つの気配だ。

(;´_ゝ`)(やべ、兵卒だったら上官のふいんき作っておかないと……ふいんき?)

兄者は微妙な事で焦っていた。

焦りながらも、一歩一歩足を進める。


そして気配の正体に辿り着く、どうやら一人は隠れているようだ。

157 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 22:49:23.20 ID:780KVCjI0
( ´_ゝ`)「プギャー一等兵か」

プギャー一等兵だ、ある事で有名な兵である。
怠惰な兵、だと将校の間で揶揄されている。

( ^Д^)「……私のような者の名をご存じとは、光栄です」

何か、兄者が現れたことよりも、少し違う事を気にしている様な感じがする。

( ´_ゝ`)「光栄に思う必要はない。いい噂を聞いてるわけじゃないからな」

彼は、ポケットに入れた煙草の箱を取り出した。
ラウンジから持ってきた物だ、VIPの物とは質が違う。

( ´_ゝ`)「要るか?」

( ^Д^)「……遠慮しておきます」

自分の申し出を断られたことが嬉しいのか、
兄者は軽い笑みを浮かべて、煙草をポケットに押し込んだ。

( ´_ゝ`)「俺にも君の名が届いているということは……分かるだろう」

( ^Д^)「素行不良の問題兵士、ですか?」

どうやら、怠慢な兵だという事は自覚しているらしい。

158 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 22:51:35.31 ID:780KVCjI0
( ´_ゝ`)「いやいや、そこまでは言わんが……まぁ、やる気がないだとか、戦う気がないだとか」

( ^Д^)「そんなつもりはありませんよ」

先程のは、自虐として言ったらしい。

彼が言うには、

( ^Д^)「私はただ、戦う理由というものを探しているだけです」

との事だ。だがこれは結構な問題である。

( ´_ゝ`)「……おかしなことを言うな。軍に身を置いていながら、理由を探す、とは」

愛国心の高いVIPの兵だけに、かなりの異端者だ。
理由が無い、という事はモチベーションの低下にもつながる。

( ^Д^)「軍に入ったときは、何も考えてなかったのです。
     ただ鮫島に来てからというもの、何のために戦うのか分からなくなりました」

( ´_ゝ`)「司令官の前だというのに、そこまで正直に話していいのか?」

( ^Д^)「偽るよりはいいでしょう」

161 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 22:53:48.64 ID:780KVCjI0
プギャー一等兵、こいつはどうやらかなりの曲者だ。
上官に怯む様子を見せない。
それを戦場で活かしてくれれば、と兄者は考えたが無理だろう。

戦う理由が無いのだから、命を賭ける理由も無い。

( ´_ゝ`)「まぁ、一理ある」

溜息のように煙を吐いた。
もくもくとした煙は、風に流されどこかへ消えた。

( ´_ゝ`)「しかし戦う理由を見失うとは、兵としてあるまじきことだと思わないか?」

( ^Д^)「思いません。人間なんて不安定の塊です。
     失礼ながらお訊きしますが、兄者中佐は何のために戦っているのですか?」

此処まで突っかかってくるとは、兄者も予想外だった。
上官の意見を否定して、怯むことなく質問をしてくる。

( ´_ゝ`)「平和のためだ。二国間の紛争を解決して、平和を取り戻すのが俺の使命だからな」

( ^Д^)「その理由が自分にも当てはまるか、考えたことがあります。
     ですがやはり私は、平和のために戦おうという気になれませんでした」


162 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 22:55:20.30 ID:780KVCjI0
( ´_ゝ`)「平和でなくてもいい、と?」

( ^Д^)「違います。世の中、平和であるに越したことはありません。
     ただ、そのために銃の引き金を引く気になれないんです。
     そこまで大きなことは考えられないんです」

( ´_ゝ`)「そんなものか。お前とは考えが合わんようだな。
       ……ところで、プギャー一等兵。聞きたいことがあるんだが」

粗方吸い終わったのだろうか、岩に煙草を押し付ける。
火の消えたそれを、兄者は草むらに放り捨て踏みつけた。

( ´_ゝ`)「……最初から、このあたりに甘い香りがする。まるで女のような。
       それと、同じようなタオルを二枚持っているのも気にかかるんだが」

少し、プギャーに焦りが見えた。
やはり、誰かいる。

( ´_ゝ`)「それに俺の姿を見たとき、一瞬慌てただろう」

( ^Д^)「……当然でしょう。兄者中佐がこんなところを歩いていたら」

よくもまあポンポンと、言い訳や意見が浮かぶものだ。
兄者は感心していた。

166 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 22:57:46.64 ID:780KVCjI0
( ´_ゝ`)「俺は島の把握のために歩いていただけだ。お前は何のために?」

( ^Д^)「星を見るために」

( ´_ゝ`)「そんなキャラじゃないだろ」

( ^Д^)「そうですか? 自分に似合ってると思うんですが」

( ´_ゝ`)「まぁ、いい。お前が何をしていようが、俺には関係のないことだ」

兄者が背を向ける、それを見たプギャーは少し安心したのだろうか。
一瞬気が抜けた、そこで兄者は、

( ´_ゝ`)「……プギャー一等兵」

一瞬立ち止まった、プギャーの焦りが伝わってきた。
そして疑問は確信に変わる。
やはり、女がいる。間違いない。

( ´_ゝ`)「俺はお前が何をしてようが、それを咎めるつもりはない。
       例え博打に興じようが、女に現を抜かそうが、星を見ようが、関係のないことだ。
       しかし、いつまで経っても戦う気になれないのであれば――――色々考えなければならない」

だが、兄者には関係のないことだ。

167 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 22:59:27.63 ID:780KVCjI0
( ^Д^)「…………」

( ´_ゝ`)「お前の才能は知っている。"駒"として見れば優秀そのものだ。
       しかしお前は人間だ。だからこそ精神的な問題が出ているのだろうとも思うが」

任務さえ、問題なくこなせば。

( ^Д^)「戦いさえすれば何も言わない、ということですか?」

( ´_ゝ`)「理解が早くて助かる。俺の言ったことを分かってくれん部下が多くてな、辟易しているんだ。
       何故戦う理由を見失ったのかは知らんが、早めに取り戻すことだ。自分のためにも、"誰か"のためにも」

今度こそ、兄者は止まることなくプギャーから離れていった。
最後に、「自分は気づいているぞ」ということを強調して。



(;´_ゝ`)(キャラ作りって大変だな……)

自分の部屋に戻り、部下への対策をいろいろ考えた兄者であった。

170 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:02:03.44 ID:780KVCjI0
7月14日には、艦隊が鮫島を包囲し始めた。
そこから砲撃も加わり、島全体が大打撃を受ける。

海軍、空軍と大敗続きで、このままではラウンジによる只の「殺戮」となってしまう。
そんな現状もむなしく、ガシューから兄者の元に届いた報せはこれだった。

「あと3日ほどでラウンジ軍が上陸する」

北部の海兵はほぼ存在しない状態らしく、上陸まであと少ししかないとの事。
フィルは張り切ってはいるが、物量、兵量共にラウンジのほうが圧倒的に上だ。

まともに戦えば、死ぬだろう。





その日の夜、とある兵を部屋に呼び込んだ。大尉程であろうか、よく覚えていない。
ガシュー達に言ったような事を、その兵にも言ってみる。
反応はあまり良いものではなかったが、半ば脅迫をしてスパイを引き継がせた。

もう、スパイという立場には疲れていた。身が持たない。
面倒な役割だが、奴ならやってくれるだろう。
根拠のない信頼を寄せ、スパイのことは忘れることにした。

174 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:04:06.80 ID:780KVCjI0
翌日、また良くない情報が舞い込んできた。

「石油採掘施設が破壊された」

滑走路が無い今、試作機はあっても飛べない。
今日鮫島は、本土に近いということ以外の重要性を失った。

(;´_ゝ`)「ラウンジ軍……早すぎる、ガシュー! フィルとドラルに伝えろ!
       戦闘の準備だ! 今回は俺も出るぞ!」

〔;´_y`〕「了解しました!」

7月15日、鮫島が慌しく動いた。

来るべき戦闘の準備だ。



そして17日、ついにラウンジ軍は上陸してきた。
予想通り、北部が破られた。

178 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:06:42.57 ID:780KVCjI0
しかし、ここで役に立った物があった。
隠し砲台だ。

ラウンジ軍は、偵察機を寄越したらしいがこれだけは発見できなかったらしい。
上陸するときに砲台からの攻撃、ラウンジ軍はかなりの痛手を負った。

その隙にフィルとドラルの部隊が突っ込んだ。
3千ほどの兵を率いていた。決して多くはないはずだが、砲台による支援が役に立ち、甚大な被害を与えた。

( ´_ゝ`)「隠し砲台が、まさかこのようなところで役に立つとはな」

| `゚ -゚|「ええ、意外でした」

汗を拭きながら、フィルが答える。
今回の一番の功労者は彼だ。

最前線に潜み、隠し砲台と共に銃で攻撃。
近づき、乱れてきたところでナイフで敵軍を掻き乱した。

結果、ラウンジ軍は大敗を喫することとなった。

180 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:08:25.74 ID:780KVCjI0
| `゚ -゚|「このまま上手くいけばいいですが……」

( ´_ゝ`)「戦だからな、まだ分からんよ」

そう言って、兄者は煙草に火をつける。
落ち着く為には必要なのだ、弟者に言ったのと同じ事を、フィルにも言っていた。

それから、一日、一日とラウンジ軍は着実に進んでいく。
奇襲が利いたのは初めだけだったが、隠し砲台の支援はまだに役に立つ。

( ´_ゝ`)「ラウンジ軍を食い止めろ! 後方からの支援もあるんだ、負けはしない!」

兄者が先頭に立ち、兵卒の士気を高める。
機関銃を乱射する司令官の姿に、自然と周りの指揮も上がっていった。

182 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:10:19.37 ID:780KVCjI0
7月20日


今日は戦闘を仕掛けてくる気配もない。
ラウンジ軍に「中将として」兄者の顔は割れているから、狙われる事は無かった。
そのことを利用して、彼は夕刻過ぎに村落へ向かった。



( ´_ゝ`)「こりゃ酷い…………」

村落はほぼ壊滅状態、
至る所に人型の炭が転がっている状態だった。


建物は、病院ですら焼けて無くなっていて、残ってる物は灰と炭と瓦礫ぐらいだった。
そこで兄者は、ある防空壕を見つける。

( ´_ゝ`)「ここは……?」

防空壕ということから、中はしっかり残っていた。
彼は持ってきた懐中電灯で辺りを照らす。

すると、文字が彫ってあった。

( ´_ゝ`)「何々……」

189 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:12:31.73 ID:780KVCjI0
『自分ハ、コノ世界ニ生キテマシタ
 父ハ、二年前ノ戦イデ、自分ト母ヲ残シテ、遠イ空ヘト昇ッテイキマシタ

 父ヲ失ッタ自分ト母ハ、絶望ニ打チ拉ガレナガラモ、ソレデモ必死ニ生キテイキマシタ
 一本ノ芋ヲ親子デ分ケテ、タマノ白米ニハ二人デ喜ンデ、ソレハ誠ニ慎マシイ生活デシタ
 ソノ日モ、母ノ作ッタ粥ヲ食ベテイル最中デシタ

 突然ゴオォォ、トイウ音ガシタカト思ウト、気付ケバ家族ノ思イ出ガ詰マッタ家ハ燃エテイタノデス

 イエ、燃エタノハ家ダケデハアリマセン

 自分ト母モ燃エテイタノデス

 嗚呼、自分達ハ何ヲシタトイウノデショウカ
 マダ生キテイキタカッタノニ、父ノ分モ母ヲ助ケテイキタカッタノニ
 誰ニモ迷惑ヲ掛ケズニ生キテキタノニ、理不尽ニモ命ヲ、コレカラノ生活ヲ、永遠ノ言葉ヲ奪ワレタノデス

 自分ハ既二、コノ世ノ者デハアリマセン
 セメテ、コノ防空壕二逃ゲ、コノ文章ヲ見付ケテクレタ方々二御願イガアリマス
 自分ノ分モ生キテ、コノ哀シイ戦争ヲ終ワラセテ、争イノ無イ平和ナ世界デ笑ッテ生キテクダサイ

 自分ノ分モ、母ノ分モ、父ノ分モ、全テノ戦争ニヨッテ命ヲ奪ワレタ方々ノ分モ、生キテクダサイ
 コノ争イノ凄惨サヲ後世マデ伝エテイッテクダサイ

 イツカ永遠ノ平和ガ訪レルト信ジ、自分ハ逝キマス
 サヨウナラ、サヨウナラ』

191 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:15:19.93 ID:780KVCjI0
(;´_ゝ`)「これは……!?」

辺りを見回す、人の死体らしき物も、炭も何も転がっていない。
何故? 死ぬ間際の人、もしくは死人が彫った様な文じゃないか。

しかしそれを証明する物がない。あと一つ考え付いた物と言えば……

( ´_ゝ`)「信じ難いが、霊かもな……」

戦争の被害を受けた一般人、まだ生きていたかった思いが、
霊として、この世に留められたのではないだろうか。

( ´_ゝ`)「なんてな、俺もロマンチックになったもんだな」

自分で考えたことを思い出し、少し恥ずかしくなった。
しかし、「思い」は文字という「形」として残っているのだ。

それを伝えられた人間は、行動で返すべきじゃないのか。
やはり、平和な世の中を創る、俺の使命だな。
兄者は、小さく呟いた。

195 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:17:24.03 ID:780KVCjI0



基地に戻ってから報告を聞いた。
一つ、気になる物がある。

リレントからの情報だ。

「渡辺という博士が不穏な動きを見せている。
 母木博士に嫉妬していると言う噂も立っている。充分な警戒が必要である」

との事だった。

渡辺博士と言えば、VIPでは有名な博士だ。
しかし、母木博士は更に有名だ。

母木博士が、試作機開発チームに組み込まれてからというもの、二倍のスピードで開発が進むようになったと言う。
それほど、母木博士は凄いのだ。

197 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:19:55.30 ID:780KVCjI0
それに嫉妬しているという、渡辺博士は外道で有名でもある。
やはり、監視が必要か。
兄者はそう思い、ガシューを呼んだ。

( ´_ゝ`)「母木博士を見張っていろ、殺そうとしている奴がいたら、迷わず殺せ」

とだけ伝え、退室させた。
只でさえ忙しいのだ、
無駄な雑談をしている暇さえ惜しい。

198 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:22:39.20 ID:780KVCjI0
7月28日
ラウンジ軍は、前線部隊と、新斗山からの支援砲撃に悩まされている。
かれこれ10日ほど戦っているが、予想以上に進まない。
VIPは劣勢ではあるが、時間は稼いでいた。

フィルやドラルも着々と戦果を挙げている。
思わぬ長期戦を強いられた為、ラウンジの焦りは大きく、将校が何人も討ち取られていた。

しかし、南西の部隊が危ないと聞いた。
上陸地点が二つに増えたら、間違いなくやられる。





――――そう思っていた矢先、南西からラウンジ軍が上陸してきた。

北方面での戦いに集中していたVIPは、完全に背後を突かれた形となり、大損害を受ける。

(;´_ゝ`)「くっ……最早これまでか……」

今までの比にはならないスピードで、VIP軍は後退していく。
兵も徐々に減っていき、VIPの劣勢は極まる。

202 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:26:05.52 ID:780KVCjI0
〔;´_y`〕「報告します、我が軍は押されに押され、もってあと5日程度だと予想されています!」

(;´_ゝ`)「むぅ……之はまずいな」

それから29日、30日、31日と戦い続けるがどれも大敗を喫し、新斗山目前まで迫られる。

そして、1日。
ある情報が兄者の元に入った。

30日、母木博士の見張りをしていたガシューから、母木博士が襲われ保護したと言うこと。
兄者の部屋に、今は保護されているらしい。
ここ3日ぐらい忙しくて、部屋に戻っていなかった彼は知らずにいた。

その日、兄者は自室に入る。
母木博士は寝ていた、疲れているのだろう。
起きるのを待って、自分も寝た。




彼は目を覚ました、すると目の前に母木博士がいる。

( ´_ゝ`)「おや、起きてたんですか、母木博士。
       御体の方はどのような調子で?」

まるで今起きたのではないかのような調子で、尋ねた。

J( 'ー`)し「…………ええ、すっかり大丈夫です」

204 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:28:17.07 ID:780KVCjI0
あまりいい返事ではなかった、やはり嫌われているのだろうか。
しかしこの人には真実を教えなければならない、彼はそう思っていた。

そして、真実を口にする。

( ´_ゝ`)「面白いことをお教えしましょうか、私がLです」





( ´_ゝ`)「間違えた、私はラウンジのスパイです」

普通ではありえない様な間違いをするのがこの男。
間違えのせいだろうか、伝えた真実のせいだろうか、
母木博士はかなり動揺していた。

J(;'ー`)し「ラウンジの……スパイ?」

206 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:30:46.73 ID:780KVCjI0
信じられない、といった様子だった。
無理もない、それだけ演技を続けてきたのだ。
騙されないほうがおかしい。

( ´_ゝ`)「はい、そうです。二年ほど前に潜り込みました」

母木とは対照的に、冷静に答えを返す兄者。

( ´_ゝ`)「自分の最初の目的は、石油輸出禁止措置によるVIPの反応の監視。
       それと、情報を得て、それをラウンジに流すことでしたね」

これは言うべきだろうか、彼は迷ったが、
結局言うことにした。

( ´_ゝ`)「しかし、途中で一つある事実を知りました。
       二年前の空戦、あれはVIP陸軍大将伊要の命令だったそうですね」

息継ぎをして、

( ´_ゝ`)「彼とは幼馴染でした、昔は平和をこよなく愛する奴でした。
       それが、自分から戦闘を仕掛けました。最終的にはこの戦争の原因となるようなことです。
       自分は許せませんでした、その事実を。だから奴を殺します。それが自分の新たな目的です」

208 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:32:55.55 ID:780KVCjI0
少しゆっくりと続けた。

少し感情がこもってしまっただろうか、いけないいけない。
感傷的な自分を、脳内で否定する。

J( 'ー`)し「……なぜこの話を私に?」

誰にでも気になる疑問、聞いてくるのは当たり前だ。
その為の答えも用意してあった。

( ´_ゝ`)「あなたなら大丈夫だと思ったからです。すでにガシューらには伝えてあります。
       この鮫島戦が終われば、自分はラウンジへ戻りますが、ついてきますか?
       命の保障は勿論、戦争が終わればVIP国へ無事お返しします」

此処までうまい話に、ほいほいと釣られる馬鹿はそういない。
何か裏がある、そう思うのが普通の人間だ。

J( 'ー`)し「……何故そこまでしてくれるのですか?」

母木博士は、やはり常識人だった。
彼女に、自分の意見を曲がりなく伝える。
これも、礼儀だろう。

( ´_ゝ`)「……難しいですね、でも簡単に言えば『自分は平和を望んでいるから』ですかね。
       無駄な血は流しません、ですが……今回の原因の人物は許しません。
       それ以外の人は関係ありません、こちらへ来たければ拒む事はしませんから」

209 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:34:25.89 ID:780KVCjI0
J( 'ー`)し「……………………」

( ´_ゝ`)「但し、鮫島戦が終わるまで此処から出ないこと、わかりましたか?
とは言っても流れ弾さえ来なければ死にはしません。
       もうすぐ、ラウンジ軍がここを制圧しに来ますが、話はつけてありますので安心を」

母木博士はまだ少し疑っているようだが、時間が経てばそれもなくなるだろう。

J( 'ー`)し「……………………わかりました」

( ´_ゝ`)「では、自分は少し寝させてもらいます。明日も見かけだけの司令に行かないといけないので」

そう言って、机に突っ伏して彼はすぐ眠気が襲ってきた。
やはり戦争とは辛い物だ。体力、精神力が削られる。
早く、ラウンジが押してくれないか。そう願う兄者だった。

211 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:36:00.87 ID:780KVCjI0
8月2日
兄者の元にまた良くない知らせが届く。
リレントから、渡辺博士の行方が知れないということ。
ガシューから、一般の子供が紛れ込んでると言う噂も聞いた。

その子供が、第一のラウンジの上陸地点付近にいる、という噂を聞き兄者は子供の保護に向かう。
最悪のシナリオにだけはならないでくれ、兄者はそう祈った。










――――彼が、このラウンジの上陸地点に到着する数分前

从 ー 从「この情報を餌にラウンジに願えれば……命だけは安泰だ……」

渡辺博士は茂みに潜んでいる。
VIPは負ける、そう思っていた彼女は、裏切る機会を、
待って待って待ち続けてきた。

213 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:38:03.17 ID:780KVCjI0
从'ー'从「あの胸糞悪い軍から……これでおさらばさ」

誰に言うわけでもなく呟き、茂みから出る。
すると彼女は、後ろに気配を感じる。

从;'ー'从(まさか……誰かつけてきたか……?)

警戒したような素振りを見せ、懐から拳銃を出し構える。

彼女の近くの茂みから、ガサガサ音がする。
拳銃を、そちらの方に向けた。

数分、待ってみたが反応がない。
それに退屈した彼女は、少しだけ拳銃を下げる。


その隙を見逃さず、彼女の前に人が出てくる。

咄嗟に、引き金を引いた。


出てきたのは、少年。
弾丸は、その胸を貫いた。

少し、やってしまったという顔をして、立ち去ろうとして少年の遺体に背を向けた。
その瞬間、彼女の背中に衝撃が走る。



从;'д' 从「……!? なん……だと……?」

217 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:40:41.78 ID:780KVCjI0
(  ω )「……何もしてないのに、撃ってくるから悪いんだお」

(;´_ゝ`)「少年! 大丈夫か!」

(  ω )「大丈夫ですお……恩知らずなラウンジ兵がくれた、これのおかげですお」

そう言って少年は、ロザリオを見せてきた。
これを胸に入れていたのか、なるほど。
兄者は感心した。

219 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:42:33.66 ID:780KVCjI0
――――少年が撃たれそうなころ、兄者は

彼は必死に走った、
間に合ってくれ、生きててくれそう願いながら。

しかし、上陸地点の茂みまでたどり着いたときには、遅かった。
渡辺の放った弾丸が、少年を貫いていたからだ。



自分の無力さが、嫌になった。
泣きたくなった、叫びたかった。

だけど、少年は生きていた。
それがとても嬉しく、それこそ涙が出そうになる。

だけど、その後の行動が問題だ。
どんな形であれ、人を撃った事に変わりは無い。

その事実は、ずっと心に残るだろう。
もし殺してしまったともなれば、重責と取ることになる。
今でなくても、大人になってから、その責任に苦しめられることになるかもしれない。

未来ある子供に、そんな重荷は背負わせられない。
俺が、この死にぞこないを消す。そう決めた。


222 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:44:46.82 ID:780KVCjI0
从 ー 从「はぁ……苦しいよぅ……助け、ゲホッ!」

( ´_ゝ`)「……少年、俺等が見えないように、茂みに隠れてなさい。
       命は助ける、絶対だ」


(;^ω^)「把握しましたお、それと名前はブーンですお」

( ´_ゝ`)「そいつは失礼、悪かったなブーン君。
       では今から、哀れなこのクズを始末する。
       刺激が強いから、見るんじゃないぞ?」

(;^ω^)「お……把握しましたお」

そう言って、ブーンは見えなくなるところまで走った。
勘違いしていないか少し心配だが、まあいいだろう。
今の兄者の心配はこれだった。

224 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:46:44.68 ID:780KVCjI0
( ´_ゝ`)「……さて、何か言いたい事は?」

从;ー;从「お願いしますぅ! 命だけはぁ! なんでもしますから!」

地べたを這いつくし、兄者に縋る渡辺。

せめて、せめてブーンを撃った事を後悔する。
その姿勢さえ見せれば、兄者は生かすことも考えていた。
しかし、そんな素振りは見せずに自分の命の確保をすることだけを考えていた彼女、

その姿勢に呆れた兄者は、彼女に話しかけた。


( ´_ゝ`)「では……君に問う。君が逆の立場なら、俺を殺すのを躊躇ったかな?」

その問いかけに彼女は嗚咽を漏らすだけで、返答はない。

( ´_ゝ`)「戦場にいたとはいえ、無関係な子供の命。それを奪おうとした俺に慈悲を与えるか?」

从 ー 从「…………ゲホッ! ガハッ!」

血反吐を吐き、倒れる。
今の言葉の意味を理解したらしい、
兄者には、彼女を助ける気が無いという事を。

諦めたように、目から「涙」と「光」が消えた渡辺。
その姿を見て、やっと懐へ手を伸ばす兄者、取り出したものは黒い塊だ。
悲しく、そして冷たいそれは渡辺の眉間へと寄せられていた。

銃口から弾丸が放たれ、命を一つ奪う。

226 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:48:24.17 ID:780KVCjI0






返り血を浴びたので、海水で流す。
思ったより服にも飛び散っていて、血まみれな状態になった彼。
誰も周りにいないことを確認し、小さく呟いた。

( ´_ゝ`)「……いい男が台無しだ」

誰もいないはずなのに、彼の耳に「ねーよwww」という突込みが入ってきたそうな。



服についた血以外は、完全に落とした。
彼はブーンを探す、怖がられはしないかと思ったが、仕方の無いことだろう。

227 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:51:22.59 ID:780KVCjI0
ブーンは、兄者から結構離れたところにいた。
少年の、血まみれの大人を見る目は、どこか慣れていた。

( ´_ゝ`)「……驚かないのか?」

( ^ω^)「……僕は、血を見ることには慣れましたお。
      避難船が爆破されたとき、沢山の血を見たからですお」

そう言って、微笑んだ。
自虐の笑みだ、兄者はそう思った。
こんな小さいうちから、穢れていて大丈夫なのだろうか。

少し、大人の目から見て不安だった。




( ´_ゝ`)「……これから君を、VIP軍の基地
       と言っても陥落寸前だがな、まあ大丈夫だ」

(;^ω^)「おっ……なんでですかお?」

229 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:53:10.27 ID:780KVCjI0
( ´_ゝ`)「それは大人の秘密って奴だ、裸の語り合いをした奴にしか教えらんねえよ」

(* ^ω^)「おっ、じゃあブーンも脱げば教えてもらえるんですかお!?」

( ´_ゝ`)y-~~「だが断る」

( ^ω^)「ラウンジの人は、恩知らずだおー」

(;´_ゝ`)「な、何故分かった!?」

(;^ω^)「おっ!? 当たってましたかお!?」

くだらない冗談を交わしつつ、基地を目指す。
しかし、この少年は本当に頑丈だ。

目の前で人の死を見て、それを一人で耐えてきた。
肉親とも離れ離れ、
信じるものは、我が身一つのこの鮫島で生き延びてきた。

この子の頑丈さは、何時か役に立つ。
そう思った兄者だった。





基地につき、ブーンを母木と同じ部屋に入れた。
あの二人は面識が会ったらしい、すぐ打ち解けて仲良く過ごしてくれそうだ。
母木にも、ブーンにも、有意義な時間となると思う。

230 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:55:08.10 ID:780KVCjI0
8月3日
ついにラウンジ軍に新斗山が奪われる。
兄者は、基地内に進入した、ラウンジの隊長格に事情を説明する。
どうやら、彼の顔を知っていたらしくすんなり通った。

母木とブーンは、兄者の部屋で保護することに。

そして兄者は、上官からの連絡で、

「命尽きるまで鮫島と共に戦え!」

との連絡が入った為、仕方なく戦争継続することに。
この戦が終わったら、上官を殺してやる。
そう呟いた兄者だった。




(;´_ゝ`)「押されているが怯むな! 撃て! 殲滅せよ!」

兵卒の士気も下がる、これは負け戦だ。
勝てもしないのに……何故そこまで。

その時、ドラルの部隊が急襲を受けた。
伏兵だ、あれはまずい。

ドラルの救出に行かねば、
兄者は五百ほど兵を連れて、駆けていった。

234 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:57:15.22 ID:780KVCjI0
《#´_‥`》「ぬおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

力任せに、刀を振り回す。
何人も、勢いで吹き飛んだ。

《;´_‥`》「はぁ……はぁ……」

ドラルの部隊が快勝して、先へ進んだ。
しかし、森に差し掛かった途端に、何千という兵が出てきた。
少数で、切り崩すように戦っていたドラルの部隊は囲まれてしまう。

7割ほど、討ち取られただろうか。
ドラルは未だに剣を振り続けていた。

不満だらけだったVIP。
戦わなければ死ぬ、と言うことで嫌々戦ってきた。

やっとこの国、軍からも離れられる。
そう思っていた矢先だった。
これではもう、生き延びる事は無理だろう。

そう思うドラルの頭に、二つ、文字が浮かんだ。



       特       攻


いつ死ぬかも分からない身だ、一花咲かせて見せよう。
そう、決めた。

235 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/30(木) 23:59:39.70 ID:780KVCjI0
《#´_‥`》「貴様等、最後に言い残す事はあるか?」

強気なドラルの言動に、思わず吹き出すラウンジ兵。

今更笑われようがどうでもいい、こいつらは、死ぬのだから。
残りの兵は、二千ほど。ドラルを囲んでいるのは、二百ほど。

《#´_‥`》「そうか、ないか。では行くぞ」


中佐、申し訳ありません。
そう、心の中で呟いた。


声を上げて、走り出す。縦横無尽に、刃を走らせる。
幾つも飛ぶ、兵の首。
しかし、自分も無傷では済まない。

左腕に、傷跡。切られたらしい。
しかし、もうどうでもいい。


《#´_‥`》「ぬああああああああああああ!!!!!!」

力の限り、叫んだ。まるで自分自身の士気を高めるように。
響き渡る、咆哮。
怯む、兵士。

ラウンジ兵は臆病なのが多いな、そう思った。

238 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:02:03.64 ID:gWC2dvb50
何十、いや百ぐらい首が飛んだだろうか。
目に見えて、兵の数は減っていた。

だが、自分の左腕がもう持たない。
こうなれば、右腕のみで。
命 果 て る ま で




そう思ったとき、右肩に衝撃が走る。
切られたのだ、
ポトリ、と刀を落とした。

《  _‥ 》「どうやら……もう何も……考える必要はなさ……そうだな」

意識が遠くなる、ああ死ぬのか。
不思議と恐怖は無い、寧ろ安らかな気持ちだ。

向こうに、中佐の駆けてくる姿が見えた。
こんな僕のために、ありがとうございます。
声に出そうとしたが、力が入らなかった。

全身の力が抜けていくのが分かった。
もう、何も考えられない。
視界が、黒く染まってゆく。

239 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:04:37.58 ID:gWC2dvb50




(  _ゝ )「ドラル…………」

兄者は、寸での所で間に合わなかった。
ドラルの部隊は全滅。
ラウンジの兵は、半分以下まで減っている。

これも、鬼人の如き活躍をしてくれた、ドラルのおかげだろう。
二百近い兵を、一人でほぼ壊滅させた。

フィルも引き連れてきたので、残りの兵はフィルに任せて戻った。

( ´_ゝ`)(結局……一人死んでしまったな……)



その夜、ドラルを静かに火葬した。



参加してくれたのは、ガシューと、その他大勢の兵卒だ。
母木博士とブーンは、これ以上負担をかけてはならないとの判断から何も言わずじまい。
リレントとフィルは、嫌っていたらしく顔も見せなかった。

241 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:06:55.49 ID:gWC2dvb50
兄者は改めて、不仲なんだなと実感した。


実はその日、フィルは深い傷を負っていたらしく、4日、5日、6日と戦には出ることはなく。
7日に、鮫島は陥落した。

その知らせをまず、朝一番で弟者に伝えた。
制圧された、という事を伝える為の機械も用意されていた為、すぐ済んだ。


5時間ほど仮眠を取り、母木博士とブーンに伝えた。
そして、ラウンジに戻ることも。

( ´_ゝ`)「我々はラウンジ側に戻ることに致します、貴方は如何なさいますか?
       それとブーン君は勿論、連れて行きますので」

(;^ω^)「お……まじかお……」

( ´_ゝ`)「此処に残るか?」

(;^ω^)「それは死んでしまうおwwww」

( ´_ゝ`)「では来い。じゃあ母木博士、どうします? 今からでもVIP本土に行きますか?」

244 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:08:47.14 ID:gWC2dvb50
男同士で冗談を交し合ったあと、兄者が尋ねる。
少し、沈黙が流れたが、はっきりと口を開く母木。

J( 'ー`)し「……連れて行ってください……戦争の悲惨さだけでも、後世に伝えます」

やるべき事をしなければならない、そんな気持ちが伝わってくるような言葉だった。
しかし、そのやるべき事はまだできない。
VIP本土攻略が終わってからだ。

( ´_ゝ`)「わかりました、では本土を攻撃している間は、ラウンジの自分の部屋でおとなしくしていて下さい」

そういうと、風を切る音が聞こえた。
ナイスタイミング、兄者は親指を立てる。

ヘリコプターが来た、弟者が乗っているのだろう。
この鮫島の風景に似合わない黒い鉄の塊は、バルコニー前で滞空している。

( ´_ゝ`)「迎えが来たようですね、少し待っててください」

(* ^ω^)「凄いお! 凄いお!」

( ´_ゝ`)「うるさい、黙れ」

( ;ω;)「おぉ……」

(;´_ゝ`)「分かった! 悪かったから!」

( ^ω^)「それでいいんだお」

(#´_ゝ`)「…………弟者、もういいか?」

245 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:10:33.59 ID:gWC2dvb50
バルコニーへ寄り、運転席にいる人間に確認を取る。
母木からは、その男の顔が見えたのだろう。

J( 'ー`)し「双子ですか?」

こんな質問をされた。

後ろを向いたまま答えるのは、マナー違反だ
しかし、まだ話し合いが終わってないので仕方なく答える。

(    )「ええ、そうです、弟です。」

(´<_` )「兄者が敬語を使うなんて珍しいな」

(    )「うるさいぞ、弟者。目上の人には使ってるだけだ」

(´<_` )「すいませんね、こいつ上司を上司と見ない奴で。敬語使うこと自体稀なんですよ。
       要するに、この男に尊敬されてるんですね、これは珍しい」

( ´_ゝ`)「いい加減煩いぞ、では此処から乗ってください」

気のせいか、少しばかり頬を赤らめていたような気もする。

247 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:13:16.14 ID:gWC2dvb50
まず母木博士が乗り込み、次にブーンが乗り込んだ。

(* ^ω^)「凄いお! 凄いお!」

J( 'ー`)し「凄いねぇ……持ち出して平気だったんですか?」

(´<_` )「平気ですよ、ちゃんと許可得ましたし」

その言葉に母木は頷き、辺りを見渡す。
顔なじみがいたのだろうか。

J( 'ー`)し「リレントさん……」

どうやらそれは、リレントらしい。

(ゝ○_○)「おや、局長さん。こんにちは」

爽やかな声が、中に響き渡る。
今回ばかりは、リレントも何も隠してないらしい。
正直に、受け答えしていた。

また少し、沈黙が流れた。
それをまた、母木が破る。

J( 'ー`)し「あれ……ドラル少佐はどこですか?」

249 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:15:05.50 ID:gWC2dvb50

彼女にとっては、当たり前の疑問かもしれない、
しかし、此処で出すのはまずかった。
誰も反応しない、兄者も、2人の少佐とリレントも。

しばらくして、やっとその意図が分かったらしい。
目を瞑り手を合わせ、祈っていた。




そしてまたしばらくして、

( ´_ゝ`)「鮫島戦か…………歴史に残る戦いだったな」

兄者が呟いた。

250 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:17:05.71 ID:gWC2dvb50
弟者以外は眠っている。
やはり、戦争と言う物はあってはならない。

そう思ったとき、彼の頭に一つ
あることが思い出された。


( ´_ゝ`)「……一度ラウンジへ行ったら、俺をVIP本土につれてってくれ。
       小型の飛行機でいい、出来れば目立たないような。
       近くで待っていろ、決着をつけてくる」

(´<_` )「本当に……やるのか?」

( ´_ゝ`)「ああ、俺の手で殺さねばならない」

(´<_` )「把握した」


ヘリ内は、それから暫く無言だった。

252 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:19:00.78 ID:gWC2dvb50





ラウンジに着いた。
兄弟は、5人を兄者の部屋に預けに行く。

道行くごとにすれ違う将校が、礼をしてくる。
あれだけ危険な作戦を、ミスもなく成し遂げたのだ。

その男が何をしようと許される、5人も部外者を連れていて何も言われない理由はそれだった。

256 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:21:24.68 ID:gWC2dvb50
元帥には、作戦の成功を報告した。
よくやったな、昇進も視野に入れておく、
元帥からの言葉は、要約するとそういうことだという。

その言葉を、兄弟で軽く聞き流し、戦闘機を一つ、拝借した。
鮫島で見た、VIPの戦闘機。その色に染めていく。
何日もいるわけではない、数時間誤魔化せればいいのだ

塗り終わった翌日、戦闘機は兄弟を乗せてVIPへと出発。
内部で、彼らは会話一つしなかった。
緊張なのか、怒りなのか、それは彼らにしか分からない。

258 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:24:27.99 ID:gWC2dvb50
数時間後


VIP国、の首都。
そこに存在する、軍の本部。

そこの一室に、陸軍大将伊要はいた。

(=゚ω゚)(…………負けちゃったよぅ)

鮫島戦、結果は大敗。
判断ミスか、いや違う。
ラウンジが強すぎるのだ。

物量、兵量ともに完全に負けている。
挑む相手を間違えた。今更になって反省する伊要。

省みるべき点を、書類にまとめ、彼は机にうな垂れた。

すると、ドアのノック音が響く。
小さな声で「どうぞ」と答えた。

入ってきたのは、兄者だった。
       
( ´_ゝ`)「悪いな……負けちまったよ……」

まず、謝罪の言葉を述べる彼。
少しの違和感を感じる伊要。
しかしあまり気にせずに、

259 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:27:08.35 ID:gWC2dvb50
正直に返した。

(=゚ω゚)「いや、生きてるだけでいいよぅ。よく無事だったよぅ
     俺の判断ミスだよぅ、空戦仕掛けろなんて言うんじゃなかったよぅ」

と言った。その言葉の中に、失言が混じっているとも知らずに。

(#´_ゝ`)「わかった、今此処で殺してやる」

突然の兄者の剣幕に戸惑う伊要。
その間に、もう一人が入ってきた。
弟者だ、何故ここに。様々な疑問が浮かぶ。

(´<_` )「お前の敗因は二つ、人を信じすぎるところ。
       それと平和を愛する心、それを忘れたせいだ」

そう言って彼は、伊要の縄で腕と足を縛り始め、口にガムテープをする。
弟者に言われたことを聞いても、納得できない伊要は不思議そうな顔をした。
そうすることしか出来なかったからだ。

(#´_ゝ`)「不思議そうな顔だな、教えてやるよ。冥土の土産にな。
       俺はスパイとして潜り込んだのさ、VIP軍に。信じたお前は俺を司令官にする始末。
       そして平和を愛する心を忘れたお前は、事もあろうにこの戦争の原因になっている。
       誰だ!? 空戦を仕掛けさせたのは? 調べていったらお前の名前が出てきた。
       そして今、貴様は自供したも同然。許せなかった! お前の変わり様もな!
       …………幼馴染を信じて、裏切られ、殺される気持ちはどうだい?」

その視線を読み取ったのか、兄者が一気に捲し立てる。

261 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:29:16.52 ID:gWC2dvb50
(=;゚□゚)「むっ……! ムグッ……!」

喋ろうとするが、口がふさがれている為に声が出ない。
腕も、足も縛られ何も出来ないその様は、
「戦争」という名の絶対的な力の前に、無力にも消えていった沢山の命のように。

 

兄者が、ポケットから拳銃を取り出す。
それを、伊要の眉間に突きつけた。
必死の抵抗をするも、動けない。

(#´_ゝ`)「言いたい事は聞かん。人殺しの言うことなど聞く価値もない。
       ………………………………じゃあな、『元』親友…………」

兄者はそう言い終わると、引き金を引いた。



「元親友」と言う言葉と、自分の行いを後悔しながら、伊要は死んだ。

264 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:31:23.40 ID:gWC2dvb50
( ´_ゝ`)「…………」

死体を、そのまま何も弄らずに置いたのは「元」親友としての意思の表れか。
無言で二人は部屋を出る。

(´<_` )「兄者……良かったのか?」

( ´_ゝ`)「……なぁ、弟者よ。俺の思うに、あいつはもういない。
       だけど、昔のあいつはとっくのとうにいない。今さっきまでいた、あいつに食い潰されたんだろうな。
       だからさ、今のは復讐だったんだ。そしてこれから、昔のあいつを弔う為に恒久の平和を創ろう。
       ………………何十年、何百年かかっても、子孫代々この意志を受け継がせていこう…………」

(´<_` )「……把握した」


8月の噎せ返る暑さの中、彼らの夢はまた一人の命の重みを引き継いだ。
「恒久の平和」という実現困難な、しかし人類全員が望んでいるであろう夢。

266 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:32:48.18 ID:gWC2dvb50






それから数ヶ月経ち、戦争は完全に終わる。
鮫島戦が終わってからすぐ、本土への攻撃が始まった、

VIPが完全に負け、ラウンジの支配下に置かれる。
首都も大空襲で焼け、復興しなければならない。
しかし復興には、指導者となるべき人間が必要だ。

そこで、ラウンジ軍の中から満場一致で選ばれたのが、
流石兄者大将、そしてサポートとして弟の弟者中将である。

真の平和を望む二人は、瞬く間に荒れ果てたVIPを復興させていく。
しかし、鮫島の石油採掘資源などは、未だにラウンジが支配している。
このようなところも解決して、豊かなVIPを創らなければならない。

まだまだ、彼らのやる事は山積みだ。

268 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:34:41.88 ID:gWC2dvb50
彼らの親友の為、
戦争の被害者の為、
夢の実現の為に。

彼らの奮闘は続く。




「おーい、そこの資料とってくれー」

「把握したー、ってこれエロ本じゃないか兄者!」

「んもぅ……弟者のえっち///」

「……俺本土へ帰る」

「待って! ごめん冗談だから! ポルノ聞いても文句言わないから! ねぇ!」

( ´_ゝ`)y=ー 兄者の007のようです 完


282 名前: ◆PORNOqm4Ug :2007/08/31(金) 00:43:23.57 ID:gWC2dvb50
ワンテンポ遅れましたが、読んでくださった皆様ありがとうございました。
残り少しとなりましたが、最後までこの総合合作を読んで楽しんでいただければ幸いです。

inserted by FC2 system