303 名前:エピローグ ◆SugarIiluA :2007/08/31(金) 23:17:27.09 ID:CpUHCcWr0
( ^ω^)ブーンたちが戦場を駆け巡るようです
エピローグ
バス停でお姉さんと別れてから、半刻程。
僕は整備すらされていない道を、まっすぐ歩き続けていた。
右手に見える海は、夕日の光を受けて、オレンジ色に輝いている。
どこに行っても、海と空は綺麗だと感じた。
だが、青と朱のコントラストに、鮫島沖合での事を思い出してしまう。
頭を振って、瞼の裏にこびりついた皆の死に顔を振り払った。
思い出すのが怖かった。僕が生きている事を恨まれていそうで、怖かった。
( ^ω^)「……ここまで来るのは、大変だったお」
秋特有の高い空を眺めながら、ぼんやりと呟く。
本当に色々とあった。鮫島を脱出する間に。
305 名前:エピローグ ◆SugarIiluA :2007/08/31(金) 23:18:49.10 ID:CpUHCcWr0
目が覚めたら病院にいた。
生きていた事に絶望し、誰一人助けてくれなかったVIP軍に失望していた。
それでも、カーチャンとトーチャンに会いたかった。
――脱出しよう、一人だけの力で
そう決意して、病院を脱出した。
これが事の始まりになると思いもせず。
307 名前:エピローグ ◆SugarIiluA :2007/08/31(金) 23:20:05.63 ID:CpUHCcWr0
密林で大怪我した女性を助けた。
ラウンジ軍人なのは分かっていたが、助けずに居れなかった。
まさか銃をくれるだなんて思わなかった。
ノハ;;凵G)「よかった……いきてて……ほんとによかった……」
少しの間だけしか、一緒に生活していなかったのに、そんな事を言われるなんて思わなかった。
純粋に嬉しかった。そして、自分のしようとした事を、深く悔いた。
ヒートさん、元気にやってるのだろうか。
310 名前:エピローグ ◆SugarIiluA :2007/08/31(金) 23:22:10.71 ID:CpUHCcWr0
防空壕の中で、幽霊少年に出会った。
彼の腕が、僕の体を貫いた時は驚いた。
色々な話が出来て、楽しかった。
まさか、こんな戦場で同い年位の人間と、話せるなんて思ってもみなかった。
(-_-)「空から。僕は空から母さんと一緒に君を見守っているから。ブーンが無事両親に会えるよう祈っているから」
この言葉に涙が溢れて、止まらなかった。
これがお別れじゃない。彼もそう言ってた。だが、離れ離れになるのが悲しくて、その言葉が嬉しくて。
彼の分までしっかり生きて、生きて、そして天国に行く時が来たら、
「ヒッキー、今までありがとう」
笑いながら、そう言おう。
そして、今度こそちゃんと握手しよう。
313 名前:エピローグ ◆SugarIiluA :2007/08/31(金) 23:23:23.25 ID:CpUHCcWr0
神父らしきラウンジ兵に出会った。
質問文に質問文で返すという、馬鹿な人だった。
拷問と言った単語が彼の口から出たとき、正直あまり怖くなかった。
きっとあの人は、根がいい人なんだ、そう思えた。
( ゚∀゚)「悪いな。今の俺にゃ、それ位しかやれる物が無いんだよ」
そう言ってくれた、ロザリオ。
これが僕の命を助ける事になるとは、彼も予想していなかっただろう。
少し歪んじゃったど、ちゃんと持ってますよ。
314 名前:エピローグ ◆SugarIiluA :2007/08/31(金) 23:24:25.85 ID:CpUHCcWr0
迷い込んだ研究所で、一人の女性に出会った。
息子の為と自分に言い訳して、人を殺す為の道具を作っていた。
腹が立った。友達を傷つけ、殺した人たちと同じ事をしていたから。
J( 'ー`)し「……一人の壮年に、当たり前の事を気づかせてくれただけだよ」
再び会った時、彼女は柔らかく微笑んで、そう言った。
今でも意味は良く分からない。
だけど、少なくとも彼女は、復讐の念からは解放されたんだろう。
今度こそ、ちゃんと前を向いて歩けてるといいな。
316 名前:エピローグ ◆SugarIiluA :2007/08/31(金) 23:25:28.23 ID:CpUHCcWr0
林の中で、一人のVIP兵に助けられた。
正直な所、VIP兵が助けてくれるとは思っていなかった。
あの時、誰一人助けてくれなかったのに。救ってくれなかったのに。
( ´_ゝ`)「……少年、俺等が見えないように、茂みに隠れてなさい。
命は助ける、絶対だ」
その言葉を、信じてみようと思った。
そして忘れよう、全ての憎しみと恨みを。
恨んでも、憎んでも、友達が帰ってくるわけではない。
それなら、彼らの為にも、少しでも長く生きられる道を選ぼう。
ちなみに、あの時、ねぇよwwwと言ったのは、彼の耳に聞こえていたのだろうか。
319 名前:エピローグ ◆SugarIiluA :2007/08/31(金) 23:26:54.05 ID:CpUHCcWr0
それから数ヶ月後。僕はVIPへ帰ってきた。
大空襲にあったらしい首都は、大分立ち直っていた。
家がぽつりぽつりと存在し、闇市は活気に溢れていた。
だが、お金の無い僕は、食べ物を買えず、飢えで倒れた。
それを助けてくれたのが、黒髪の女性だった。
目の下には隈が出来ており、瞳は虚ろ。
もしかしたら、大空襲で大切な人を失ったのかもしれない。
川 ゚ -゚)「少年、助けたお礼と言ったらおこがましいが、
その……鮫島戦について話してくれないか?」
バスの中でそう言われた時、驚いた。
話してくれ、なんていう人が現われるとは思いもしなかったからだ。
僕は馬鹿正直に全てを話した。
すると女性は憑き物が落ちたような表情を浮かべていた。
彼女が僕の話から、何を感じたのかは分からない。
でも、何かの助けになっていたのなら、幸いだ。
323 名前:エピローグ ◆SugarIiluA :2007/08/31(金) 23:28:39.30 ID:CpUHCcWr0
***
( ^ω^)「なんだか、遠い昔の事のようだお」
ぼんやりと空を見上げて呟く。
先ほどまでオレンジ色だった空が、今では藍色になっている。
夜が迫ってきている証拠だ。
急いで親戚の家に行こうと、走りだしたその時。
「ブーン、ブーンや!」
遠くからカーチャンの声が聞こえる。
あたりをぐるりと見回すと、左手の森の方に、カーチャンの姿があった。
どうやら怪我はしてないようだ。その姿に、安堵で涙が零れそうになる。
だが、それを我慢して、カーチャンの下へと走った。
324 名前:エピローグ ◆SugarIiluA :2007/08/31(金) 23:29:28.37 ID:CpUHCcWr0
⊂二二二( ^ω^)二⊃「カーチャン、ただいまだお!」
「おかえり、ブーン」
カーチャンの柔らかな笑みが、僕を迎えてくれた。
頬に冷たい物が流れるのを感じつつ、僕は駆け抜ける。
緩やかに吹く潮風を、秋色の空の下を、そして、今、この瞬間を。
――あの戦場を駆け巡ったように。
327 名前:エピローグ ◆SugarIiluA :2007/08/31(金) 23:30:21.06 ID:CpUHCcWr0
( ^ω^)ブーンたちが戦場を駆け巡るようです
完