( ^ω^)アブノーマルのようです
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 19:27:25.98 ID:5Rd1eZUpO
僕たちが知り合ったのは2年前である。

とあるネット上の掲示板には、大勢の人が押しかけ賑わっている。
共通の趣味を持った者たちが、日頃交わせない会話を楽しんでいたのだ。
心の中に秘めておくべき話を、匿名というネットの利点を生かして曝していたのである。

そして、アブノーマルというスレッドに僕たちはいた。
他のスレッドに比べれば人も少なく、どちらかというと過疎気味のスレッドではあったが、
僕たちという固定のメンバーがいた為、完全に無下にされていた訳ではない。
むしろ、その微妙な加減がスレッドに惹きつけられる理由だったのかもしれない。

僕たちは一年の交流を通し、随分と親しくなった。
もちろんネット上であるのに変わりはないが、僕自身はネット外の友人以上に心を許していた。

その中の一人が、つい先日、こんな言葉を書きこんだ。

『OFF会をしませんか?』

抵抗は感じなかった。
この書き込みが無かったら、いずれは僕が書きこんでいただろう。
僕は、ほぼ即レスに近い形で、

『是非』

と、短く、簡潔に、肯定の意を表した。


4 名前: ◆9d9cVF02x2 :2009/06/06(土) 19:29:38.56 ID:5Rd1eZUpO
そして、他のメンバーの書き込みが、

『僕も参加します』

『私も、面白いと思う』

と僕に便乗するかのように続いた。
集合場所や日時は、スムーズに決められていった。


僕は今、少し睡眠不足な体で、待ち合わせ場所に向かっている最中だ。
OFFというものは初体験である為、やや緊張している感は否めない。
だが、胸が高鳴っているのは緊張や不安ではなく、むしろ楽しみであるからなのだろう。
この睡眠不足も、遠足を待ち侘びる少年少女の感覚と同じだ。

アブノーマル。
変わった性癖を持つ人。

彼等は一体、どのような話を聞かせてくれるのだろうか。


―――( ^ω^)アブノーマルのようです


5 名前: ◆9d9cVF02x2 :2009/06/06(土) 19:32:15.66 ID:5Rd1eZUpO
扉を開くと『いらっしゃいませ』という声と、耳に響く鐘の音。

駅前の小さな喫茶店は、昼下がりの営業時だというのにあまり賑わっていない。
だからこそ僕たちはこの場所を選んだのだが、店主に対していらぬ心配を抱いてしまう。
駅ビルの洒落たコーヒーショップに客を奪われたのだろうか、歳を食った、固定客と思われる人ばかりだった。

店の一番奥の席には、他とは違う雰囲気を纏った客がいた。
一目で、それが僕が向かうべき席だと分かった。

(´・ω・`)「はじめまして、ショボンです」

('、`*川「はじめまして、ショボンさん、これで全員揃いましたね」

ジーンズにTシャツというラフな格好の女が僕を迎え入れた。
汗をかいているらしく、所々に浮かぶ斑点がどこかいやらしい。

椅子に腰かけ、悟られないよう情報の整理を行う。

メンバーの中に女性は一人、つまり、この女性は『ペニサス』。
ネット上では一歩引いた目線から冷静にレスをする為、僕よりも年上だと思っていた。
しかし、外見はどんなに色を付けても二十代前半が精々といった所。
やはりネットで得られる情報なんてものは、その人の上っ面に過ぎないらしい。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 19:33:48.00 ID:5Rd1eZUpO
( ^ω^)「……こんにちは『ショボン』さん、お会いできて嬉しいお」

(´・ω・`)「やぁブーン君、僕も同じ気持ちさ」

この人は『ブーン』、それだけは間違いない。
どこかしこで見るツンツンの茶髪は、いかにも大学生といった感じだった。

('A`)「こんにちは、ドクオです」

(´・ω・`)「はじめまして、OFFのお誘いに感謝します」

『ドクオ』、このOFFを開催した本人。
細く白い体は到底健康とは思えない。満足に外出すらしていないのではないだろうか。
そんな僕の失礼な考えを察してしまったのか、すぐに視線を逸らされてしまった。

(´・ω・`)「……ネットとは違って、緊張しますね」

('、`*川「そうですね、見知った仲のようで、遠い、そんな気がします」

('A`)「まぁ、はい、でも少しずつ打ち解けていけたらと思います」

( ^ω^)「……そうだお、あれだけネットでは仲良く話せていたんだから」

7 名前: ◆9d9cVF02x2 :2009/06/06(土) 19:35:38.38 ID:5Rd1eZUpO
ぎこちない会話が、途切れ途切れに続く。
聞けば皆がOFFは初めてのようで、おまけに揃って人見知りでもあるらしい。
なんて無茶な企画だったんだろうと僕が皮肉ると、ようやく笑いの花が咲いた。
その時点で打ち解けるというまでには至らなかったが、
ぽつぽつと笑いが起こり始め、数十分もすると、並のお茶ぐらいには達した。

一口目は啜れない程の熱さだったコーヒーも、今ではすっかり温くなっている。
冷めきってまずくなる前にと一気に飲み干した。

(´・ω・`)「さて、そろそろ本題に入りませんか?」

('、`*川「折角、直接お話が聞ける機会ですしね」

( ^ω^)「掲示板に長々と書込めないような話……って感じでいいんですかお?」

('A`)「ブーンさんにはあるんですか?」

( ^ω^)「皆さんにもあると思って来たつもりですお」

否定はしないと僕が返すと、ペニサスとドクオも頷いた。
直接口にだしはしなかったが、きっと皆、こういう話を聞きに来たに違いない。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 19:37:23.59 ID:5Rd1eZUpO
( ^ω^)「皆さんご存じの通り、僕は同性愛者、つまりはゲイですお」

('、`*川「はい」

( ^ω^)「でも僕は元々、ゲイではなかった。
       生まれ持っての性癖は、特に異常ありませんでしたお」

('A`)「それは珍しいですね」

( ^ω^)「そこで、今日は僕がゲイになった切っ掛けになる話をさせてもらいますお」

彼の声は囁く程度のか細いものであったが、静かな店には十分過ぎる程だった。
ひょっとしたら、他のテーブルの客の耳にも届いていたのかもしれない。
僕らの右隣に位置する客は、丁度、それと同時に席を立ってしまった。

単なる自意識過剰という可能性もある。
しかしどちらにせよ、僕たちのような人間が、普通の人から忌み嫌われることに変わりはない。

( ^ω^)「では、子どもの頃の話を……」

言葉が、少しずつ僕の体に浸透していく。

まるで彼の思い出に忍び込んでいくかのように、イメージが、膨らむ。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 19:39:03.62 ID:5Rd1eZUpO
僕には幼馴染がいた。

物心ついた時からの付き合いだったから、これといった特別な感情を抱いていた訳ではない。
しかし、そうせざるを得なかったのは、周りの反応が徐々に変化し始めたから。

あれは、僕たちが高校二年の夏。

( ^ω^)「またラブレターを貰ったのかお?」

ξ゚听)ξ「まぁね、どうせなら直接言ってこいっていうの」

彼女は僕が思っていた以上に魅力的な女性だったらしい。
月に一度は、告白やら、ラブレターやらの甘酸っぱい話を聞かされた。

僕たちは仲が良かった。
大抵は登下校を共にしていたし、放課後に二人で遊ぶというのも頻繁にあった。
愛情は無かった。その時僕が抱いていたのは優越感。
魅力的な女性を引き連れているという事実が、僕の心をくすぐっていた。

そんな日々が続いていたとある日、彼女は突然、妙なことを言い出す。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 19:41:10.45 ID:5Rd1eZUpO
ξ゚听)ξ「ねぇ、アンタは彼女とか欲しいとか思うの?」

( ^ω^)「なんだお、急に」

ξ゚听)ξ「別に、ちょっと気になっただけ」

( ^ω^)「……ふぅん」

なんてことない質問だったが、僕は戸惑っていた。
告白されたとかそういう話ならともかく、
僕たち自身の恋愛に対しての話題は、暗黙の了解でタブーであるという空気があったからだ。

今思えば、きっとそれは当時の僕たち。
つまり、年頃の男女の微妙な関係を浮き彫りにするからだったのだろう。

そうして流れた気まずい沈黙に耐え切れず、僕は他愛の無い話題を口に出す。
ところが、彼女はそれを良しとはしなかった。

ξ゚听)ξ「好きな人とかいるなら、こうして私と仲良くするの止めた方がいいわよ。
      勘違いとかされちゃうかもしれないし」

( ^ω^)「別に僕は好きな人とかいないから問題ないお。 
       そう言うそっちの方こそ、勘違いとかされたら困るんじゃないのかお?」

ξ;゚听)ξ「私は……別に、その……」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 19:43:09.35 ID:5Rd1eZUpO
口を濁らせる彼女に対し、僕は苛立っていたように思う。
普段ははきはきと喋る口調であった為、急に変わった態度が理解出来なかったのだ。
答えは実に簡単なものであったが、僕はいかんせん未熟だった。

( ^ω^)「……まぁいいお、暗くなる前に帰るお」

ξ;゚听)ξ「あっ、うん、分かった」

見たいテレビ番組があったので、やや早足で帰路を急ぐ。
その後ろを、彼女は俯きながら、それでも離れないように付いてくる。
夕焼けに伸びる影が、時折彼女が駆け足になることを示していたが、僕は何も言わず、淡々と歩き続けた。

きっと、この瞬間が僕にとっての分岐点。
この時、いつもと違う彼女の様子に疑問を持っていたなら、違った今があったのだろう。

しかし、もう戻れないからこその過去。

いかに嘆こうとも、僕が彼女の本意に気付けなかった事実を変えられはしないのだ。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 19:45:00.43 ID:5Rd1eZUpO
もうじき夏休みという報せに、生徒達は浮かれていた。
当然僕も例外に漏れず、放課後の教室で、友達と遊びに明け暮れる計画を立てていた。
彼女が部活に努めている間の暇つぶしでもある。

そして開いた教室の扉。
忘れ物をしたクラスメートかと思えば、見知らぬ顔だった。

( ´∀`)「こんにちは、ええと、君かな?」

( ^ω^)「……僕ですかお?」

上履きの色で学年を判断するに、一個上の三年生。
部活をしていない僕にとって先輩と会話をする機会は殆どないので委縮してしまう。
朗らかな表情で話しかけてはくるのだが、どこか影を感じてしまう人だった。

( ´∀`)「ちょっと彼と話がしたいんだけど、いいかな?」

体育会系の名残の残る僕の学校では、
先輩の言うことは絶対だった為、友人たちは僕を残して廊下に待機させられた。

( ´∀`)「ん、二人っきりになれたね」

( ^ω^)「何かあまり人に聞かれたくない話でもあるんですかお?」

( ´∀`)「……実は君に頼みたいことがあるんだ」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 19:47:00.95 ID:5Rd1eZUpO
話は実に簡単なものだった。
先輩は彼女のことが好きなようで、手紙を渡して欲しいと言われた。
存外ちっぽけな頼みを快諾し、受け取った手紙を鞄の中に押し込んだ。

( ´∀`)「ありがとう、ああ、成功するといいなぁ」

( ^ω^)「応援していますお」

( ´∀`)「……そう? それじゃ、僕はこれで」

あまり手紙は好まないという話を聞いたばかりだったので、
口先ではこう言っているが、どうせ振られるだろうと僕は達観していた。
正直言えば、先輩が美男子とは言い難い容姿だったのも要因の一つ。

その後、僕は廊下に待機していた友人を呼び戻し、再び夏休みの計画を立て始めた。
先輩と何を話していたのかと聞かれはしたが、その辺のプライバシーは守ることにした。

手紙は、部活を終えた彼女と帰宅している途中、説明するまでもないだろうと、何も言わずに手渡す。
彼女が『またか』という表情で溜め息をついた為、予想は確信に変わった。

今日も彼女はどこかおかしかったが、中途半端な知識を身に付けていた僕は、
生理からくる情緒不安定なんだろうと、不埒な妄想で片づけてしまっていた。

事件は、その晩に起こる。

15 名前: ◆9d9cVF02x2 :2009/06/06(土) 19:49:03.10 ID:5Rd1eZUpO
もうじき日付が変わるという時間帯に、家の電話が騒ぎ出す。
こんな時間に不謹慎な、と僕が受話器を受け取ると、相手は彼女の母親だった。

すると、受話器の先で安堵の言葉を漏らされる。
どういうことかと問いかけると、思いがけない答えが返ってきた。

( ^ω^)「……え?」

僕は、話を聞き終えると電話を投げ捨てた。
同時に走り出す、寝巻のまま、家の扉に鍵も掛けず、闇夜に飛び出す。
すぐにじとっとした暑さに不快な気持を煽られたが、体中に流れる汗は、それが理由じゃない。

彼女の母親は言った。

彼女は、僕からの誘いを受け、夜も遅いのに出掛けていった、と。

貴方が家にいるということは、もうじき娘も帰ってくるのね、と。

当然、僕にそんな覚えはない。
嫌な想像が過り、足を速めたが、振り切ることは出来なかった。

18 名前: ◆9d9cVF02x2 :2009/06/06(土) 19:51:13.41 ID:5Rd1eZUpO
息を切らしながらも、ようやく近所の神社に辿り着く。
彼女の母親の話では、ここに行くと言い残していたらしい。

(;^ω^)「どこ……どこだお……」

公園と繋がっているこの神社は、一度にはとても見渡せない程に広い。
子どもの遊び場にはうってつけだが、心許ない外灯のせいか、夜はまるで人気がない。
しんとした闇の中、彼女を探す僕の声だけが、空しく響き渡る。

(;^ω^)「いるのかおっ!! ここにっ!!」

繰り返し叫び続けた。
出来れば、返事がないよう祈りながら。

何もなければ、それでいいのだ。
この胸のざわつきが、気苦労であったのならそれでいい。
勘違いで終わってくれたのなら。

喉も枯れ始める頃、息継ぎの合間に、僕の耳は微かな音を拾った。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 19:52:44.65 ID:5Rd1eZUpO
その音を探るように、草むらに踏み入れていく。
露出していた肌を木枝が引っ掻いていたが、気にする余裕はない。
高鳴る心臓が、小さな音を消してしまいそうだったから、神経を注いでいた。

(;^ω^)「はぁっ……はぁっ……」

茂みの向こうで待ち受けていたのは、僕の嫌な想像そのもの。

僅かな月明かりが場を照らし、現実を露わにする。

乱暴に脱がされたのか、所々引き裂かれた衣服、乱れた髪。
腫れあがった顔に、痣だらけの体、傍らに放られている縄。
乳房も陰部も露出している姿であるのに、いやらしさは微塵も感じない。

地べたに寝そべりならがら、嗚咽を漏らし続ける姿は、目も当てられない程に悲惨だった。
吐き気を催しながらも、僕は言葉を模索する。

ξ )ξ「……っく……っ……」

しかし幼馴染のそのような格好を見て、どうして冷静でいられようか。
混乱のあまり、僕は、慰めの言葉をかけることも出来なかったのだ。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 19:54:47.57 ID:5Rd1eZUpO
(;^ω^)「どうして、どうしてこんな時間に、こんな場所に来たりしたんだお」

ξ )ξ「…………」

(;^ω^)「不用心だって分かるはずだお、それなのに」

ξ )ξ「……手紙にはね、アンタからだって書いてあった」

彼女の言葉を聞いて、はっとした。
手紙とは、僕が先輩から受け取り、彼女に手渡したものではないか。

ξ )ξ「大事な話があるから深夜にこの場所へって書いてあったから、私は浮かれてここへ来たの。
     そしたら何人も男たちがいて、無理矢理押さえつけられて、そのまま」

ξ )ξ「私ね、アンタのこと好きだったの、気付かなかったかな。
      この前さりげなく意識させたつもりだったから、その気になってくれたのかなって思った。
      ……馬鹿みたいだよね」

(;^ω^)「僕が!」

ξ )ξ「ううん大丈夫、分かってる、悪いのは全部私だ。
      アンタには非もないし、このこととは何の関係もない」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 19:56:02.36 ID:5Rd1eZUpO
彼女は体勢を起こし、格好を出来る限り整えていた。
しかし、どんなに取り繕っても、元の彼女に戻れるようには思えなかった。

ξ゚听)ξ「でもさ、最後に一つだけ、聞いていいかな?」

( ^ω^)「なんだお?」

ξ゚听)ξ「私、汚いかな?」

その問いかけに対して、僕は言葉を失った。

嘘でもいいから否定すべきだというのは分かっている。
しかし、彼女の瞳は僕から逸れず、嘘をつくのを禁じていた。

だからといって、正直な気持ちを曝け出せる訳もない。
結果、何も言えず、ただ俯くのが精一杯だった。

ξ゚听)ξ「……じゃあ私は帰るね、なんだか疲れちゃった……ありがとう」

感謝の言葉に込められていた意を、僕が知ることはない。
立ち竦み、遠ざかる彼女の背を見つめるばかりの僕に、その権利はなかった。

23 名前: ◆9d9cVF02x2 :2009/06/06(土) 19:58:07.69 ID:5Rd1eZUpO
彼女と僕が言葉を交わしたのは、それが最後だった。
次の日から、彼女は家に閉じこもり、気付いた時には引っ越してしまっていた。
引っ越し先の住所を知る気には、とてもならなかった。

事件の顛末を僕は深く知らない。
しかし、数ヶ月後に先輩が普通に登校していたのを見ると、大事には至らなかったらしい。
学校の体裁の為や、彼女が事件を公にしたくなかった等、色々と理由を考えてはみたが、結局僕には関係のない話なのだ。
無関係を貫くことを条件に、僕は自身の罪から目を背けることが出来たのだから。

もしもあの時、彼女の気持ちを悟り、何らかの答えを出していたのならば。

彼女は神社に行かず、深い傷を負うこともなかった。

僕はこのIFの世界を何度も夢見て、そして忘れていく。
僕の罪すらも背負うという彼女の言葉に、甘えてしまっているのだ。

しかし心は罪から逃れようとも、体は罪の記憶を覚えている。
あれ以来、僕は女性とまじわろうとする度に、猛烈な嫌悪感に襲われるようになった。
酷い時には、あの日の彼女をフラッシュバックし、嘔吐してしまう程だった。

24 名前: ◆9d9cVF02x2 :2009/06/06(土) 19:59:39.25 ID:5Rd1eZUpO
これくらいの罰を受けるのは当然かもしれない。
僕は、崖の淵に立っていた人を、突き落としたようなものなのだ。
人を愛する資格も、愛される資格も、失っているのだろう。


ただ、それでも、僕は誰かを愛し、愛されたかった。

この荒み続ける心に、少しで良いから救いが欲しかった。

心も体も、全て包み込んでくれるような、愛を。


女性が駄目ならばと、僕は同性愛に走った。
半ば自暴自棄だったのかもしれない。愛に飢える心はまともな思考を妨げた。
しかし想いもよらぬ事だが、僕の出会った人は、こんな僕を優しく迎え入れてくれた。
そして、僕が持つ同性同士はまじわるべきではないという概念を打ち消したのだ。

彼との付き合いは、かれこれ三年になる。
心も体も他人に委ねられる幸せを、ようやく手に入れることが出来た。

僕は、罪を覆い隠すように、愛に溺れるのだ。


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:00:39.78 ID:5Rd1eZUpO
( ^ω^)「……大体、こんな感じですお」

話に一区切りをつけて、ブーンは床に目を落とした。
辛く悲しい思い出に心が痛むのだろうか。
しかし、それもそのはず、話を聞いていた僕たちでさえ、言葉を失ってしまっていたのだから。

しばらくの無言の後、店員がコーヒーのお代わりを勧めに来た。
ありがたく頂戴し、コーヒーを啜り、ようやく皆が口々に感想を述べ始める。

('A`)「悲しいお話ですね」

('、`*川「言うのも辛かったでしょうに」

( ^ω^)「だからこそ言いたかったんですお」

(´・ω・`)「というと?」

( ^ω^)「一人で背負い続けるのに、僕はもう疲れてしまったんですお。
       誰かにこの話を伝えることで、少しだけでも肩の荷が下りるような気がして」

(´・ω・`)「……そうですか」

笑顔を伴った返事であったが、僕はそれに応えることが出来なかった。
笑顔は、必ずしも良いものではないのだなと、思った。

32 名前: ◆9d9cVF02x2 :2009/06/06(土) 20:11:24.13 ID:5Rd1eZUpO
('A`)「……さて、じゃあ次は俺の番でいいですかね。
    と言っても、ブーンさん話の後では単なる笑い話ですが」

(´・ω・`)「ここに、人の生き方にケチをつけるような無粋な輩はいませんよ」

('A`)「そう言ってもらえると助かります」

陰に沈んだような顔が、少しだけ明らんだ。

('A`)「えーと、俺はロリコンです。
    まぁ、世間的に言えば変態ですね、別に否定する気もありません。
    社会の屑だっていうことも自覚しているし、自分に存在価値があるとも思いません」

何かの冗談かと思ってしまう出だしであったが、当人は至って真面目だった。
開きかけた口を閉じて、言葉に耳を傾ける。

('A`)「ただ、それでも一人の女の子を好きになってしまった。
    そんな哀れな男の話を聞いてください」

そしてまた、新たな世界が展開され始めた。


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:13:11.42 ID:5Rd1eZUpO
大学を卒業して、俺は就職浪人になった。
こう言えば聞こえはいいが、実際は体の良いニートである。

むしろ大学を卒業したという実績が、無駄なプライドと安心感を作ってしまい、
そこらのニートより性質も悪く、『本気出せばすぐに就職出来る』なんて甘い考えに浸かっていた。

その日も、俺は共働きで家にいない両親に毒を吐きながら、コンビニに昼飯を買いに行く。
店員が『また来たよ』という訝しげな視線を送ってきたことに、むかついていた。

そして帰り道の公園で、俺は出会ってしまったのだ。

(*゚ー゚)「んあ〜……んんっ」

('A`)「……あ」

天使だ、と呟いた。

冷静に見てみると、小学校高学年くらいと思われる少女だった。
ブランコに座りながら足をぱたぱたと忙しなく動かしていて、それがなんとも言えなく可愛らしい。
さらさらの黒髪が二つに束ねられているのも俺好みで、生脚スカートも高得点。
眠たそうに欠伸をした口の中に、性器をぶちこんでやりたいと思った。

満足いくまで視姦してからその場を後にした。
当然のようにその子で抜いた。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:15:11.21 ID:5Rd1eZUpO
次の日もコンビニに行き、公園に立ち寄った。
草陰に隠れながら、あの子を探してみる。

(*゚ー゚)「……んー、んー♪」

(*'A`)「……んはぁー」

二時間くらいして、ようやく彼女は姿を現した。
鼻歌を口ずさみながら、滑り台やジャングルジムで楽しんでいる。
そしてその日も彼女はスカートであり、純白の下着が見え隠れしていた。

きっと、あれは俺を誘っているに違いないのだ。
そう思った俺は草陰から飛び出し、真っ直ぐに彼女の元へと向かう。
悲鳴を上げながら逃げ惑う彼女を押さえ込み、服を乱暴に剥ぎ取った。綺麗な肌だ。
小さな口に捻じ込むように舌を入れて、乱暴に中を舐めまわす。ぴちゃぴちゃ。音が鳴る。美味しい。
大粒の涙を零しながら『お母さん』と震えた言葉を繰り返す姿が、俺の性器の血流を良くしていた。
たっぷりと涎を彼女の口の中へ流し入れた後、胸元に手を這わす。まだ膨らみかけだが、むしろ好みだ。
ふよふよのおっぱいの中心にある突起物を、執拗に、何度も何度も弄る。
彼女の嗚咽に甘い息が混じり始める。俺の手の動きに合わせて、小さな体が苦しそうに悶え始めた。
あまりの愛おしさに俺は彼女を抱きよせ、愛してると呟く。『えっ?』と小さな返事が届く。
どうやらあまり嫌がってはいないらしい。しかし、俺は嫌がる女を嬲る方が興奮するのだ。
ズボンを脱ぎ、そそり立ったイチモツを露わにする。すると、彼女の顔が一気に青冷めた。
そうだ、そういう顔がそそるのだ。俺は、彼女の口の中へと無理矢理―――。

('A`)「あっ」

パンツの中に射精してしまった。
気持ち悪い感触を味わいながら、惨めにも帰宅した。

37 名前: ◆9d9cVF02x2 :2009/06/06(土) 20:17:12.55 ID:5Rd1eZUpO
また次の日、コンビニも行かずに公園の草むらで待機。
デジカメを持参し、撮影の準備も完璧に整えていた。

(*'A`)「はぁーはぁー、さぁどこからでもおいで」

しかし、一向に彼女は姿を現さなかった。
これはおかしい。事故にでも遭ってしまったとでもいうのか。

まさか、不審者による、誘拐。

(;'A`)「そんな……いやでも……」

「ねぇねぇ」

(;'A`)「あんなに可愛いんだもの……くそっ、犯罪者め……」

「ねぇってば!」


(#'A`)「だーっ!!うっさい、俺には重大な任務が――!!」

(;*゚ー゚)「ご、ごめんなさい」

天使が、脅えた表情でそこにいた。

つまり俺の肩を叩いていたのは、この子という事になる。
今着ている服を、絶対に洗いはしないと誓った。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:19:03.01 ID:5Rd1eZUpO
(*゚ー゚)「昨日もここにいたよね、おじさん?」

(;'A`)「い、いたけど……それが何?」

(*゚ー゚)「暇なら一緒に遊ぼうよ、おじさん!」

笑顔で投げかけられた言葉を一瞬、理解出来なかった。
しかし脳が理解すると同時に、とてつもない幸福に俺は満たされ、世界は薔薇色だった。

('A`)「いいけど、俺はおじさんじゃなくて、お兄さんだよ?」

(*゚ー゚)「分かった、お兄ちゃん!」

『お兄ちゃん』という一言に込められた魔力を、その時、改めて思い知る。
完全に射貫かれてしまった俺は、最早彼女以外の者が見えなかった。
童貞ニートが、こんなに可愛らしい子と知り合えるなんて奇跡に他ならないのだから。

(*゚ー゚)「ところで、そのカメラは一体何?」

(;'A`)「こっ、子供には分からないものだよ!」

(*゚ー゚)「んー?」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:20:14.24 ID:5Rd1eZUpO
日が暮れるまで一緒に遊んだ。
二人きりだったけど、大声で笑いあって、賑やかに過ごした。

何てことはない普通の遊び。
公園の遊具で楽しんだり、鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたり。
駆けまわる彼女は、あんまりにも無防備だった。
必然的に俺は前屈みになり、それが良いハンデになってくれていた。

('A`)「……そろそろ帰んないとまずいんじゃない?」

(*゚ー゚)「えー、もうお終い?」

('A`)「家の人も心配しちゃうんじゃない?」

(*゚ー゚)「……そうだけど」

この公園前の通りは商店街と住宅地を繋げている。
つまり、夕方頃には買い物帰りの主婦がわんさか現れるのだ。

もしも、俺が彼女を追い回しているシーンを目撃されでもしたら、
暫く日の目を浴びれない羽目になってしまう。
それは避けたい。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:21:38.33 ID:5Rd1eZUpO
しかし、

(*゚ー゚)「もうちょっと遊びたい」

と上目遣いで、服の端を掴まれながら言われてしまったのだ。
例え、冷血人間であっても一瞬で体が沸騰するような破壊力を秘めている。
ここで、彼女を拒絶し別れを告げるなんていうことがどうして出来ようか。

('A`)「うーん、お兄さんももう少し遊びたいけど……」

(*゚ー゚)「じゃあ!」

('A`)「でも今日はもう暗くなってくるし、また明日、ね?」

だからこそ、俺は次の約束を取り付けることにした。
折角手にした少女と触れ合えるチャンスを、逃すわけにはいかない。

(*゚ー゚)「分かった! また明日ね!!」

ヒット。心の中でガッツポーズ。
無垢な笑顔が胸を痛ませたが、同時に至福を与えてくれたので問題にはならなかった。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:23:51.26 ID:5Rd1eZUpO
それから、夏の間の二か月、ほぼ毎日彼女と遊んだ。
俺は毎日が休日だったし、彼女も夏休みだったので時間面の不都合は特になかった。

こうして毎日のように外に出る事は、少し前の自分だったら考えられない。
外出は基本的に苦痛であると感じていたし、人と積極的に関わるなんてもってのほか。
思えば中学生頃から続けてきた根暗な自分とは、生まれ変わったかのように違う。

それは単に愛の所為とでも言うのだろうか。
彼女の笑顔を見るのが幸せだったし、彼女の傍にいれるだけで良かった。
今まで生きてきた中で、唯一光り輝く思い出になったことだろう。

小学生相手に本気で愛を語るなど、常人には理解出来ないのかもしれない。
しかし俺が抱いている感情は、どう考えても愛に他ならないのだ。

彼女の行動で一喜一憂し、夜眠りにつくまで彼女のことを考える。
朝目覚めれば彼女の事を想い、待ち侘びれず、時間よりも早く公園に向かう。
そして俺自身も子供になったかのように、一日を遊びで終えるのだ。

唯、どうしようもなく痛感するものもあった。

それは、無情にも、逆らえない現実だった。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:26:50.41 ID:5Rd1eZUpO
('A`)「もう少しで、夏休みも終わりだね」

(*゚ー゚)「だねー」

ブランコを並んで漕ぎながら話していた。
オレンジ色に燃える太陽が、小さな影と大きな影を映し出していた。

('A`)「そしたら、もうこうやって遊ぶことも出来ないね」

(*゚ー゚)「……なんで?」

彼女は、ブランコを漕ぐのを止めて、俺をじっと見据えて言う。
何となく、疑問に思ったから口に出した、といった感じだった。

('A`)「だって学校の子と遊んだりとか、色々忙しくなるじゃない」

(*゚ー゚)「私はお兄ちゃんと遊べればそれでいいよ」

勿体ない言葉だなぁと、心に噛みしめ、目一杯ブランコを漕ぐ。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:27:49.93 ID:5Rd1eZUpO
('A`)「嬉しいけど、やっぱり俺はもう遊べないよ」

(*゚ー゚)「なんで?」

('A`)「それが君の為になるからさ」

(*゚ー゚)「……どうして?」

('A`)「分かってほしいなぁ」

(*゚ー゚)「分かんないよぉ」

('A`)「それでも分かってほしいな」

(*゚ー゚)「分かんない!」

ブランコから飛び立ち、振り返る。
彼女の小さな体が震えていて、『うー』と静かに唸っていた。

そういえば、追いかけっこで転んだ時もすぐ泣いていた。
こういう時は、頭を撫でてやるとすぐに泣き止むのだ。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:29:42.97 ID:5Rd1eZUpO
('A`)「泣かないでよ」

(*;ー;)「ねぇ、なんで、私のこと嫌いになったの?」

('A`)「……そんな訳、ないじゃないか」

そんな訳は、ない。
君を嫌いになるなんて事がどうして出来ようか。

(*;ー;)「じゃあ私のこと、好き?」

('A`)「それは……」

(*;ー;)「私はお兄ちゃんのこと好きだよ」

('A`)「……そうなんだ」

胸が高鳴った。面には出さない。

彼女の言う『好き』は自分の思う『好き』とは大きく異なるはずなのだ
それでも、彼女の口から願い続けていた言葉が出て来たせいで、酷く動揺する。

同時に心が乱れる。黒い欲望がどろりと溢れ出す。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:31:38.47 ID:5Rd1eZUpO
しかし、彼女は俺の苦い表情を見て、言葉を紡ぐ。

(*゚ー゚)「……子供扱いしてる?」

('A`)「別にそんな事はないけど」

(*゚ー゚)「嘘だよ、絶対に子供扱いしてる」

('A`)「嘘じゃないってば」

(*゚ー゚)「違うの!私は本当にお兄ちゃんが好きなの!
     自分が子供だって分かってるけど、お兄ちゃんにだけは大人として扱ってほしい」

彼女は顔を赤くしながら、それでも目線を決して逸らさなかった。
懸命に想いを伝えている姿は、至って真剣だった。

(*゚ー゚)「キスとか、そういうのも本で見てるから知ってるよ。
     まだまだ体は小さいけど、これから大きくなってくれると思うし・・・…」

(*゚ー゚)「だから、私じゃダメ?」

視界が一度、ぐにゃりと歪んだ気がした。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:33:19.91 ID:5Rd1eZUpO
好きとは一体なんなのだ。
自分の好意を相手に伝える言葉。
愛を語る上で最も簡単で、最も分かりやすい言葉だ。
それが今、こうして自分に向けられてしまっている。
それも、自分が愛している相手にだ。必然的に俺達は両思いだったという事になる。
しかし、俺はこの言葉を受諾していいのか。
相手は一回りも違う相手だ。世間の風は冷たい。
俺達の恋愛を肯定的に見てくれる人は皆無だろう。
むしろ冷たい目で見られるのは必須だ。それどころか警察のお世話になる可能性すらある。
しかし愛とは本来、自由なものであるべきではないのだろうか。
人を愛する気持ちを、理性で抑えることなど出来はしない。
俺が、今彼女を愛する気持ちだって、本当は自粛するべきだと分かっている。
それでも止まらない、抑えきれないからこその愛ではないか。誰しもそうして人を愛するのではないのか。
彼女と歳の差があるというだけで、愛が阻まれていいのだろうか。
本人達にとって、それは愛を失くす理由にはならない。
この理由で愛を失くすとは、つまり周りを気にし、他人に流されて愛を捨てるということだ。
恋愛に第三者の意見は必要ない。ならば俺もこの愛を貫いてもいいのではないか。
待て、問題はそれだけでない。
俺が彼女を愛するということは、同時に彼女が俺を愛するという事だ。
それはつまり、彼女の記憶に、俺のような人間を愛していた時期が残るということになる。
それに、彼女はキス等の行為についても知っていて、認める発言までしていた。
俺が彼女を汚す?まだいたいけな少女の体に、傷をつけるような真似をしてはならないのではないか。
そもそも、彼女の好きという言葉は本意なのか?小さな頃に犯すちっぽけな過ちに過ぎない可能性は?
俺と彼女が愛し合って、彼女は幸せになれるのか?
ああああああああぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア            あ。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:35:24.74 ID:5Rd1eZUpO
('A`)「……俺も、好きだよ」

(*゚ー゚)「本当!?」

('A`)「うん、大好きだ、愛してる」

(*゚ー゚)「私も、私も大好き!!」

嬉しそうに俺の腕に抱きつく彼女は、本当に可愛らしい。
頭を撫でながら、一時の幸せに浸かる。
恍惚とした様子で俺を見つめる視線に、少しだけどうかしてしまいそうになった。

('A`)「でも、今日はもう遅いし、一旦帰った方がいいよ」

(*゚ー゚)「うーん、そだね……明日から学校だけど、明日も会える?」

('A`)「もちろん」

(*゚ー゚)「やった! 明日も公園でね!!」

力強く振られている手に応えると、そのまま彼女は駆けて行った。
あっという間に見えなくなった姿に、哀愁を感じる暇もない。

そして次の日、俺は公園に出向かなかった。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:38:08.67 ID:5Rd1eZUpO
昼過ぎにこっそり見に行くと、いつものように元気な彼女がそこにいた。
数時間してからもう一度見に行くと、退屈そうに顔をしかめる彼女がそこにいた。
夕方過ぎ、流石にもういないだろうと見に行くと、泣きそうな表情で俯く彼女がそこにいた。

心が痛まないと言ったら嘘になる。
しかし、俺はもう二度と彼女に会わないと誓ってしまった。

想いが通じ合ってしまった時、それは俺達の関係の終わりを示すのだ。
少女と大人の恋愛である以上、この恋愛はどちらかの一方通行でなくてはならない。
ロリコンという性を持ってしまった俺が、絶対に守るべきだと信じているルール。

いたいけな少女が、俺のような男と愛し合って、幸せになれる訳がないのだ。
彼女の事を愛するのなら、絶対に手を出してはいけないという事を、肝に免じておかなければいけないのだ。

遊び相手以上の関係を望んでしまった俺がいけなかった。
だが、触れ合っていく内に、相手側にも少なからずの好意が湧くというのは容易に分かること。
言うなれば、俺と彼女が出会ったこと自体が、既に間違いだったのだ。

彼女と愛しえば、いつか彼女を傷つけることになる。
そして、彼女を拒絶すれば、今のような結果に陥る。
後者の方が付き合いも短い分、傷は浅いのかもしれない。
しかし、どちらにせよ彼女に辛い思いをさせることには変わりはないのだ。

やはり、俺と彼女は、出会うべきでは無かった。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:41:01.74 ID:5Rd1eZUpO
ロリコンという性癖は、誰も救わないし誰も幸せになれない。
おまけに治す術もなく、世間から見れば変態と呼ばれ、後ろ指をさされる。
こうして、俺は一つの結論を見出した。


俺は人を愛してはいけない。

そして、人に愛されてもいけない。

孤独に、ひっそりと生きていくべきなのだ、と。


『愛の形は人それぞれであり自由』という言葉を否定するつもりはない。
何故ならこの言葉は、ある一定の基準を満たした上で用いられる言葉なのだ。
人間として間違っている俺が、この言葉に反論する資格はない。

俺が今出来る恋愛といえば、電脳世界の疑似恋愛くらいだ。
一般人からしてみれば、気持ちの行為であるに違いないだろう。

それでも、これは一つの愛の結果のなのだと細やかにでも主張したい。
報われない愛が、行き場のない愛が、それでも満たされたくて行き着いた先なのだ。
全員にとは言わない。数十人に一人にでもこの気持ちを分かってもらいたい。

愛は、誰もが手に入れることの出来るものではないと。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:49:28.15 ID:5Rd1eZUpO
死にたい、すいませんでした。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:50:12.99 ID:5Rd1eZUpO
('A`)「みっともない話ですいません」

ドクオは痛々しくも、自虐的な笑みを浮かべていた。
無理やり作り上げている表情であることが嫌でも伝わってくる。

(´・ω・`)「……いや、先ほども言ったとおり、人の生き方にケチをつけたりしません。
      それどころか、貴方のお話、とても胸に沁み入りました」

('、`*川「報われない愛という奴ですね」

( ^ω^)「あまり人に言えた話でないのは確かですが、ドクオさんの判断は立派だったと思うお」

('A`)「……そう言ってもらえると助かります」

各々が、もう4杯目になったコーヒーを味わう。
僕等が入店してきた時にいた客は既に入れ替わっていたが、相変わらずこのテーブルだけが不穏な空気を醸し出していた。

('A`)「あの時の俺の選択が、正しかったのか、そうでなかったのか、今でも分からないんです。   
    眠りに就くたびに、彼女の笑顔と泣き顔が浮かんでくる。
    もしかして、今尚彼女は一人で悲しんでいるんじゃないか、そう思ってしまうのは自意識過剰でしょうか」

ドクオの質問は、彼自身が毎晩苦しんでいることを示唆していた。
しかし、僕たちがその質問を答えることは出来ない。
出来たとしても、それは気休め程度の曖昧なものにしかならないのだから。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:50:58.01 ID:5Rd1eZUpO
('、`*川「次は私の話……と行きたいんだけど、ごめんなさい。
     実は貴方達二人のような、大それた話は持ち合わせていないの」

( ^ω^)「そうなんですかお?」

('、`*川「ええ、今の『彼女』とはうまくいっているしね。
     今までも後腐れのあるような恋愛はしてきてないつもりよ」

('A`)「それが一番だと思いますよ」

ペニサスは、所謂レズビアンだ。
これまで多くの男性に求愛を受けたが、魅力を感じることはなかったらしい。
僕の目から見ても彼女は美しいを言わざるを得ない。
男性に交わらない女性がこんなにも美しいとは、神様も皮肉なものだ。

( ^ω^)「ショボンさんは、どうですかお?」

(´・ω・`)「すまないね、実を言うと僕も大した話はないんだ」

('A`)「今の『彼氏』とはうまくいってるんですか?」

(´・ω・`)「それが、少し危うい感じになってきたかもね」

( ^ω^)「……そうなんですかお?」

(´・ω・`)「ああ、困ったものだよ」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:52:19.11 ID:5Rd1eZUpO
僕もブーンと同じ同性愛者だ。
しかし、僕の場合、これは生まれついての性癖。
例えば確かにペニサスは美しいが、性的な魅力は一切感じない、といった具合に。

('、`*川「でも、少しまでの書き込みでは随分とラブラブなご様子でしたけど?」

(´・ω・`)「そうだね、ラブラブな事には変わりないね」

('A`)「ショボンさんの口から『ラブラブ』と聞くと、かなりの違和感が」

(´・ω・`)「……心外だね」

それからは、とりとめもない会話が続いた。

ドクオやブーンが語ったような話はなく、単なる雑談。
スレに書き込まれた話題を掘り返したり、今までになく趣味や仕事の話をしてみたり。
全員の距離が縮まったとでもいうのだろうか。
本当に、至って普通の友人のように話し合っていた。

とても、楽しい時間だった。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:54:10.34 ID:5Rd1eZUpO
暫くして、話題の種が尽きると、誰からもなく解散の雰囲気が流れた。
全員、話したいことは話し終えたし、コーヒーを飲んでも喉の渇きがなくならない。
一言でいえば、話し疲れてしまっていた。

('、`*川「じゃあ、そろそろ……」

('A`)「そうですね、何だか外の天気も怪しいですし」

ドクオの言葉で窓から空を見ると、分厚い雲が一面を覆っていた。
天気予報では晴れ模様だったが、どうやら外れることになりそうだ。

(´・ω・`)「……あ、でもいいですかね、最後に一つだけ話したいことが」

( ^ω^)「何ですかお?」

(´・ω・`)「さっきのブーン君の話なんだけどね、どうしても気になる事があったんだ。
      出来れば、ドクオさんとペニサスさんにも聞いてもらいたい」

('、`*川「……構いませんけど?」

('A`)「俺も、全然」

話の了解が得られたので、ほっとした。
雨に降られないように、出来るだけ簡潔に話すつもりだった。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 20:56:31.39 ID:5Rd1eZUpO
(´・ω・`)「一言で言わせて貰えれば、君は『彼女』のことが好きなんじゃないかな?」

( ^ω^)「……!!」

(´・ω・`)「君は愛が欲しかったから同性愛に走ったと言ったね。
    それこそが何よりの証拠だと思う」

( ^ω^)「……何が言いたいんだお?」

(´・ω・`)「君は『愛される』ことを求めていたけど、『愛する』ことは求めてなかったんじゃないかな。
      だって、今も愛しているのは彼女のことだけだからね。
      つまり、君は恋人を愛してはいない、愛を貰って満足してるだけなんだ」

ブーンは憤っているようで、しかし反論はしてこなかった。
その渋い顔が、思い当たる節があると語っているように思える。

(´・ω・`)「そんな関係を続けて、相手の人に申し訳ないとは思わないかい?
      恋人に対する裏切りであると言っても過言ではないと思う」

(  ω )「でも、僕は……」

(´・ω・`)「責めるつもりはない、考え直して欲しい。
      今、君がすべきこと、本当にしたいと思う事を」

65 名前: ◆9d9cVF02x2 :2009/06/06(土) 20:58:52.13 ID:5Rd1eZUpO
僕の問いかけに、ブーンは無言で思い詰めていた。
様々な想いを交錯させているのだろう。
下唇を噛みしめて、いかにも苦しんでいるといったようだった。

(´・ω・`)「ペニサスさんとドクオさんはどう思いましたか?」

('A`)「どうって……」

('、`*川 「私は申し訳ないですが、ショボンさんの言ったような印象も受けましたね」

('A`)「えっ?」

('、`*川「女性が駄目だったから男性を愛する、なんて考えは普通浮かびません。
     元々、男性も女性も愛せたとなると話は別ですが、そうではないのでしょう?
     ならば、最初から愛していなかったとなると、しっくりくる所もあります」

(´・ω・`)「そうですか、ドクオさんは?」

('A`)「俺は……そうだな、確かにその考え、分かるかもしれない。
    自分の在り方を変えるだなんて、並大抵のことじゃない。
    それが愛の所為だったと言うなら、少なくとも俺は納得がいく」

二人の考えは僕に賛同するものだった。
僕らがアブノーマルであるから故の一致だったのかもしれない。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:00:16.94 ID:5Rd1eZUpO
(´・ω・`)「……という訳ですが、どうですか?」

(  ω )「僕は、僕は……」

(´・ω・`)「迷い苦しむのは当然でしょう、でも君には決めてもらわないといけない」

(  ω )「ショボンさん、貴方は……」

(´・ω・`)「僕のことは関係ない、君の想いを打ち明ければ良い」

(  ω )「でもっ、だって、貴方がそう言うということはっ!!」

(´・ω・`)「僕はね、君に幸せになってもらいたい、ただそれだけなんだ」

僕の言葉を聞いて、やや興奮気味だったブーンの顔がはっとした。
どうやらこの言葉だけで、僕の本心が伝わってくれたようだ。
ブーンらしいなと、心の中だけで笑った。

(´・ω・`)「僕たちは、皆、どこかおかしいのかもしれない。
      それでも、人に幸せになって欲しいという気持ちだけは当然のように持ち合わせている。
      理由がそれだけじゃ、駄目かな?」

( ^ω^)「そんな……ことは……」

(´・ω・`)「ならいいじゃないか、幸せになってくると良い」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:01:59.23 ID:5Rd1eZUpO
( ^ω^)「でも、僕が彼女に会う事は許されるのかお……?」

('、`*川 「許されないと思うなら、罪を感じながらでも良いんじゃないかしら」


( ^ω^)「もしかしたら、彼女は男性に恐怖を抱いてるかもしれない」

('A`)「だからこそ、ブーンさんが行くんじゃないですか。
    貴方しか出来ないこと、と言い換えても良いですね」


( ^ω^)「僕に、本当にその権利があるのかお?」

(´・ω・`)「世界中の人が君を罵ろうと、僕だけは君を庇うよ。
      君も、それだけで満足と思ってくれるんじゃないかな?
      何度も言うけど、僕は君に幸せになって貰いたいから、ね」


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:04:10.43 ID:5Rd1eZUpO
( ^ω^)「……僕は!」

(´・ω・`)「行ってきなよ、そしてまた、皆で会おう」


返事もせず、ブーンは店から飛び出した。
外はいつの間にか、ざあざあと雨が降り出していたが、どうやら気にする様子もない。
取り残された僕ら三人は、顔を見合せて笑った。



笑った。



笑った。



笑った。



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:05:49.94 ID:5Rd1eZUpO


笑った。






そして世界が歪んだ。







ここで、僕はようやくこの夢から目覚めた。




70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:07:38.78 ID:5Rd1eZUpO
テレビは、事件の詳細を放映し続けていた。
それを、もう何度見たかも分からない。
事件現場から、犯行時刻まで、全て克明に記憶している。
新聞や雑誌の切り抜きは、もうじきノート一冊を使い終わる頃だった。

こうもこの事件が世間を賑わしているのは、あまりにも残虐な犯行だった為。
解剖や犯行現場の様子から、拷問に近い殺害方法だったと言われている。
ネットには、指の爪を一枚ずつ剥がしていただとか、
致命傷にならないように傷をつけていたとか様々な方法が載せられていたが、真相は定かでない。

更に、二人を殺害した犯人は、今も逃亡中らしい。
噂が噂を呼んで肥大化していく犯人の影は、この街を恐怖に陥れていた。

唯、僕は心のどこかで馬鹿馬鹿しいと思ってしまう。
方法はともあれ、所詮二人しか殺していない犯人に、何をそこまで。

……いや、こう思えるのは僕が犯人を知っているからなのだろうか。

そろそろ時間だ、行こう。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:08:40.68 ID:5Rd1eZUpO
『アブノーマル』のスレッドに再びオフの誘いがあった。

今度は二人きりのオフになってしまうが、それも致し方ない事だ。
レスに従い、以前と同じ喫茶店に僕はやって来ていた。

店内の様子は以前と全く変わりない。
客の入りは相変わらずいまいちだったし、当然店の装飾に変化はない。
変わってしまったのは、恐らく、僕を待つ人だけだろう。

(´・ω・`)「やぁ、待たせたかな」

('、`*川「いいえ、そんなことはないですよ」

言葉と裏腹に、テーブルには飲み終わったコーヒーカップがあった。
しかし否定された問題を掘り返すのは相手にも迷惑だろうと、無視した。

(´・ω・`)「さて、今日のオフですけど」

('、`*川「ん、もしかしたらショボンさんなら分かってくれてるんじゃないですか?」

(´・ω・`)「予想の範囲であったのですが、今の言葉で確信しました」

('、`*川「それはそれは、お話が早くて助かります」

口元だけで笑うペニサスが、不気味に思えてならなかった。


72 名前: ◆9d9cVF02x2 :2009/06/06(土) 21:10:46.04 ID:5Rd1eZUpO
(´・ω・`)「どうして、『ブーン君』とその『彼女』を殺したんですか?」

('、`*川 「それは簡単よ、私が彼女の、現在の恋人だったから」

ペニサスの返答は、予想の中で一番考えたくなかったものだった。
しかし、現実は残酷で、楽しそうにペニサスは語り出す。

('、`*川「あの子ったらねぇ、ブーンとやり直すから私と別れて欲しいって言うんですよ?
   隣にいるブーンが目を丸くしててねぇ、『まさか貴方が』って感じ?」

(´・ω・`)「なるほど、彼女はブーン君と逆に、『男が駄目だから女に』という訳ですか」

('、`*川「私ね、捨てるのは良いけど、捨てられるのは嫌なの。
     こんなに綺麗に生まれたんだもの、それくらいの権利はあっても良いと思わないですか?」

(´・ω・`)「だから、殺したと?」

('、`*川「それだけじゃつまらないから、一度気絶させて縄で縛って遊んだ訳です。
     ああ、ブーンに関しては、何かあの子を守ろうとしてたから、ついでに。
     騎士にでもなったつもりなのかしら、馬鹿みたい」

狂っている。純粋にそんな感想だけが浮かんだ。
だが、不思議とペニサスが『彼女』を愛していたことだけは伝わってきた。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:12:34.49 ID:5Rd1eZUpO
(´・ω・`)「ただ、どうしてオフを開催したのか、それが分かりません」

('、`*川「ああ、私、実はもうちょっと人を殺そうと思うんです」

思いがけない返答だった。
少なくともあっけらかんと言う内容ではない。
だというのに、ペニサスは軽い旅行にでも行くかのように語る。

('、`*川「いやね、世間は私の話で持ちきりじゃないですか。
     それに何だか興奮しちゃって、皆が私の事ばかり考えるんですよ?
     どうせ捕まるなら、世紀の大犯罪者として捕まりたいなって思ったんです」

(´・ω・`)「理解出来ない考えです」

('、`*川「別に理解されたいなんて思ってません。
     でも誰かにこの考えを伝えておきたかった。自慢したかったんです。
     それに、ショボンさんならきっと、私の情報を警察に流したりしませんからね」

(´・ω・`)「……まぁ確かに、しないでしょうね」

『でしょ!?』と満面の笑みで返される。
一種の信頼があったということなのだろうか。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:14:12.00 ID:5Rd1eZUpO
('、`*川「じゃ、そういうことだったんです。
     これから先、ニュースは必ずチェックしていてくださいね!」

(´・ω・`)「あっ、待ってください」

去ろうとするペニサスを呼び止めると、不快な顔をされる。
先ほどまでの上機嫌が嘘のように苛立っているようだ。
殺人を犯した所為で、精神が不安定になっているのだろう。

(´・ω・`)「あの日のオフで、違和感はありませんでしたか?」

('、`*川「違和感?」

(´・ω・`)「どこかがおかしかったんですよね、それに気付かなかったんですか?」

('、`*川「……特には」

(´・ω・`)「それはまぁ、そうですよね」

もし、その『違和感』に気付いていたのなら、
きっと、このオフが開かれることはなかったのだから。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:16:51.39 ID:5Rd1eZUpO
駆け寄り、ペニサスの腹部に持参した包丁を突き刺した。

ずぶりと、手に生々しい肉の感触が伝わる。
一瞬の静寂の後、店内中の人間が悲鳴を上げた。

( 、 *川「なっ、なんで……」

(´・ω・`)「違和感の始まりは、挨拶の時。
      僕はブーン君にだけ『初めまして』と言わなかったんだよね。 
      そもそも、ブーン君だけ『君付け』というのも不自然だとは思わなかったかい?」

苦悶の表情を浮かべながら僕を見つめるペニサスに、それを気付いていた様子はなかった。
思っていた以上に鈍い女だったようだ。

(´・ω・`)「僕とブーン君の会話も、少し変だったよね、まるで僕がブーン君の大切な人のようだった。
      でもそれもそうだよ、だって『僕がブーン君の恋人』だったんだもの」

( 、 *川「じゃあ……」

(´・ω・`)「ああ、どうして僕がブーン君と別れるように仕向けたかって。
      それはあの時も言ったけど、幸せになってほしかった、ただそれだけだよ。
      それに、僕には愛されていないっていう、確信があったからね」

88 名前: ◆9d9cVF02x2 :2009/06/06(土) 21:37:29.73 ID:5Rd1eZUpO
僕とブーンが初めて会ったのは、やはりネットの掲示板。
アブノーマルのスレッド会うより更に前、3年前になるだろうか。

他愛ない話を続けるうちに僕らは意気投合し、実際に会う事にした。
その場でブーンが同姓愛に興味があることを打ち明けた。
僕は根っからそうであったし、ブーンと会ったのも下心があったからだ。
僕達が肉体的な関係を持つのは、極自然な流れだ。

そして、程無くして僕はアブノーマルというスレッドに出会う。
そこに見覚えのあるHNを発見した。つまり『ブーン』だ。
僕はスレッドに書き込み、冗談半分に初対面を装った。

何故、初対面を装う事が出来たか。
それは僕が以前の掲示板では『マスター』と名乗り、
アブノーマルのスレッドでは『ショボン』と名乗っていたからだ。

HNなんていうものは、気分によって変えるのが普通だ。
どこでも同じHNを使っているブーンこそ、変わりものだと言える。

しかし、ここで一つの問題が生まれた。

ブーンは僕に、決して自分の本名を教えてくれはしなかったのだ。

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:39:53.54 ID:5Rd1eZUpO
これが僕はブーンに愛されていないと確信した理由である。
最期の最後、やはり僕との間に壁を作っていたのだ。

しかしアブノーマルのスレッドで、ブーンは僕に対する愛を語ってくれた。
それが偽りの愛だったとしても嬉しかった。
僕の愛は膨らんでいくばかりだった。
また僕は、ブーンが苦しんでいることを、薄々と感付いていた。

だから、あの日のオフで、僕はブーンの抱えるものを取り除いてやろうと考えた。
例え、その結果、僕が捨てられてしまっても構わない。
ブーンが幸せになってくれるなら、喜んで命を差し出せる覚悟だってあった。

そして、僕達は『ブーン』と『ショボン』として出会った。
僕の姿を確認した瞬間のブーンの表情が面白くて、愛おしくて忘れられない。
他の二人に遠慮して、初対面の振りをして過ごしていた。

これが僕とブーンの関係、そして僕の愛だ。
ブーンの事を一番に想い、ブーンの幸せの為に、自らを犠牲にした。

ブーンは幸せになる筈だった。
彼女との関係を取り戻し、幸せな姿を僕に見せてくれるはずだった。

それなのに、どうして。

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:41:21.24 ID:5Rd1eZUpO
どうして?どうして?どうして?どうしてどうして?どうして?
どうして?どうして?どうして?
どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?
どうして?どうして?
どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?
どうして?どうして?どうして?どうして?
どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?
?????????????????????????????????????????????
?????????????????????????????????????????????
??????????????????―――?


(´・ω・`)「どうして?」


辺り一面が、真っ赤に染まっていた。
手に包丁が握られていない。血に滑って落としてしまったらしい。
素手のまま、何度も振り落とされた拳は、ペニサスの顔面を無残な姿に破壊していた。

と思ったが、どうやらそれ以前から酷かったようだ。
胴体部分が穴だらけで、腸まで食み出ている。
体中に走る倦怠感はそのせいか。一体どれだけの力を込めていたのだろう。
興奮のあまり気付かなかった。頬を流れている涙さえも。

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:43:19.31 ID:5Rd1eZUpO
静けさが僕を包む。
人気を感じない、皆、逃げだしてしまったのだろう。
僕を包んでいたのは静けさでなく、孤独か。

(´・ω・`)「中々、うまくはいかないものだね」

結局、僕達は誰も幸せになれなかった。
愛を欲しがっただけなのに、最後に待っていたのは絶望だけだ。

その最たる例が、ドクオ。

彼は自殺してしまった。
両親が部屋に入ると、首を吊ったドクオに死体があったらしい。
部屋の机に一つの新聞記事があった。
小学生の女の子が虐めにあって自殺したという事件についての記事だった。

ドクオが夏休み遊んでいた女の子は、虐めにあっていたらしい。
苦しんでいる最中にドクオと出会い、触れ合う内に、ドクオを心の支えにしていた。
しかし、そのドクオが急に会えなくなった。不幸にも始業と同時に。
生きることに希望を見出せなかった彼女は、学校の屋上から飛び降りた。

思い人の幸せを願うことすら出来ないだなんて、こんな悲しい結末があるだろうか。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:45:23.13 ID:5Rd1eZUpO
きっと、おかしいのは僕たちではなく、世界の方なのだ。

人と違って生まれてきたばかりに、愛を手に入れることすら許されない。
見た目には何の変わりのない人間なのに。
唯一つ、変わった性癖があったというだけで、こんな結果になる。

僕達は幸せになりたかっただけのなのに。

(´・ω・`)「サイレンの音……」

誰かが通報したのだろう、最早逃げる事も出来ない。
いや、逃げるなんて選択をしようとも思わない。

僕は全ての責任をとろう。
誰も幸せになることが出来ず、人が人を恨んで終わっていく、その中で。
僕だけが人を恨まず、この世界を恨んで最期を迎えよう。
いつしか、僕達のような人間でも幸せになってくれるよう恨み、願いを託し、死んでやる。

僕が恨む世界、それはつまり―――


95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 21:46:35.76 ID:5Rd1eZUpO


『この、アブノーマルな世界を』






僕は自分の首に包丁を突き刺した。








―――( ^ω^)アブノーマルのようです




トップへ

inserted by FC2 system