28 :( ^ω^)のバイトをはじめたようです(1/5) ◆MxmMRNB472:2010/03/09(火) 01:57:31
僕はこの職場に来てまだ二日しか経っていない。
春休みのバイトということで、日給も高いみたいだしやってみたのだが、
こういう職種というのは、他のそれよりも遥かに「慣れ」を要することが分かった。中々、苦労している。
( ^ω^)「誰かの犠牲の上に成り立つシステムなんて、この世に必要ないんダス!!」
また間違ってしまった。
えーと
( ^ω^)「誰かの犠牲の上に成り立つシステムなんて、この世に必要ないですお!」
これでいいのだ。
「はーい、>>1が寝落ちみたいなので、休憩はいりまーす」
一息ついて公園のベンチに座っていたら、周りで遊んでいた子供たちに思い切りボールを当てられた。
そのときの体の振動で、手で弾いてしまった缶コーヒー。
地面に転がりアリ達を溺れさせていく。まだ一口しか飲んでいないんだ。ハラワタが煮え繰り返る。
こういうときはどうすればいいんだっけ。
(*^ω^)「てめえらナメってとシバくぞこら」
眼前のチルドレンは、何故か僕の形相を見て喜ぶ。こっちは怒りの鬼人の気分なのに
まるでこれじゃ、ミッキーマウスじゃないか。 僕は足元の枯葉を無意味に踏み躙った。
29 :( ^ω^)のバイトをはじめたようです(2/5) ◆MxmMRNB472:2010/03/09(火) 02:00:16
( ^ω^)「どうすりゃいい」
背中がむず痒くなる。これは焦燥に拠るものだ。くそうこんなガキ共に。
やっぱりまだ慣れないな、この仕事。さっさと現場に戻ろうとしたが、練習になると思って踏みとどまった。
( 3ω3)「どうすりゃいい……?」
爆笑する子供たち。「眼鏡さがしてるの?」という言葉を貰ったが、僕は家の外じゃコンタクトだぞ。
困惑する僕の背後に、ひとつの気配が。
振り返ると、現場では一番優しく接してくれる先輩が佇んでいた。
(^ω^;)「焦り はこうです」
(:^ω^)「こうですか?」
(^ω^ )「惜しいですね……」
( ^ω^)「それよりも 怒り のお手本を見せて欲しいのですが」
(^ω^#)「こう、ですね ビキビキ」
(#^ω^)「こんな感じですか?」
(^ω^ )「そうそう」
30 :( ^ω^)のバイトをはじめたようです(3/5) ◆MxmMRNB472:2010/03/09(火) 02:02:08
再度振り返ると、子供達はまだ僕への興味が尽きないらしくそこにいた。
よし、練習だ練習。
(#^ω^)「おまえらナメてっとシバくぞコラァアア!!」
子供たちは沈黙。やった。ようやくコツというか、慣れの感触を掴めてきた。
だが、数秒後。彼らは口から空気を漏らすように笑い出した。結局僕は嘲りの対象。
僕は素直に先輩に教えを乞うことにした。
( ^ω^)「あの子供達をちょっと恐がらせたいんです」
( ^ω^)「物凄い怒りはどうするのでしょう」
(^ω^ )「ちょっと応用になりますかね」
( ω )「……」
( ^ω^)「おお! 静かに怒りを湛えている感じですね!!
元からにやけているこの表情の欠点も見事にカバーしています」
(^ω^ )「そうです。しかしこれは深々と泣いていたりする感じも含意するので、結局は”場面”が重要なんです」
なるほど。この先輩からはまだまだ学ぶことが多々ある。
僕は悠然とした気分で再々度、子供達に臨んだ。
彼らは寧ろ僕の表情七変化が楽しみらしく、ショーを見るかのようにしゃがんで待っていた。
31 :( ^ω^)のバイトをはじめたようです(4/5) ◆MxmMRNB472:2010/03/09(火) 02:04:11
( ω )「お、お前等なぁ…… あのコーヒー……」
( ω )「……」
このとき、僕の脳内では「地獄の黙示録」をBGMに「ゴゴゴゴゴ」という効果音が鳴っていた。
しかし、子供が発した言葉は拍子抜けするものだった。
「ご、ごめんなさい。そんなにコーヒーがすきとはおもいませんでした
きょうのおこづかいひゃくえんあげるから、なかないで、おじさん……」
僕は無言で先輩のもとへ戻る。お金は勿論、受け取らなかったが、凄まじい敗北感が僕の心を殴る。
( ;ω;)「同情、されちゃいました……」
(^ω^ )「場面ですよ、場面」
( ;ω;)「うう」
(^ω^ )「あ、その表情!! いいですよ。次はブーンが仲間と別れて悲しむシーンですからね。
その感じを忘れずに現場に入ってください」
32 :( ^ω^)のバイトをはじめたようです(5/5) ◆MxmMRNB472:2010/03/09(火) 02:06:19
悲しみに打ちひしがれていたら、遠くで班長の声が聞こえた。
「はーい、休憩おわり! 投下再開するってよー!」
( ^ω^)「はーいwwww 今行きますおwwww」
(^ω^*)「さあwwwwwwwwwwwwwwwがんばるおwwwwwwwwwwwww」
( ^ω^)「先輩ww それ、”一人暮らし”用じゃないっすかwww」
そして僕と先輩は「ぶーーーん」と叫びながら、両手をまっすぐに伸ばして駆けていく。
これも基本動作の一つだが、案外僕は気に入っているんだ。なんだか、気持ちがいい。
それにしても、春休みはまだまだなわけで、
学年があがるころには、今度はこっち側の癖が抜けないで新生活は一苦労しそうだ。
新歓の自己紹介で、語尾に「だお」 なんて付けたら、それ以降後輩に合わす顔がないよまったく。
それじゃ、これからもバイトがんばるお!
(おしまい)
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